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サンが「憬れ」だった時代
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砂原秀樹教授
砂原秀樹教授

砂原先生のご紹介


NSUG(日本サン・ユーザ・グループ)の現会長でもある奈良先端科学技術大学院大学の砂原秀樹教授は、1984年に、日本最初の研究用インターネット「JUNET」を慶應義塾大学の村井純教授らとともにつくったインターネット研究の草分けの一人。
1988年からは、WIDEプロジェクトを通じて、日本におけるインターネットの構築とその研究に従事されています。

かつてサンは「憬れ」だった。車で言うとフェラーリ、ブランドバックが好きな方だったらエルメスのケリーバックと言えばわかるだろうか?当時コンピュータをいじっていた少年達にとって一度は使ってみたいコンピュータだったのである。

僕がサンにはじめて触れたのは1983年の後半だったと思う。一番最初のサンのワークステーションであるSun-1が誕生したのが1982年なので、初期に国内に入ってきたSun-1のうちの一台だったということになる。

ちなみに、Sun-1の貴重なマザーボードが、サンの本社があるSBSビルの26Fに展示されている。Sun-1では、搭載されていたモトローラの68000というプロセッサの仮想記憶の処理に関して技術的な問題があり、仮想記憶の機能が動作しなかった。そのため当初はBSD UNIXが動作していなかったのである。

その後、問題点の修正された68010というプロセッサが登場し、ほとんどのSun-1はマザーボードが交換された(通称Sun-1.5と呼ばれていた)ためオリジナルのSun-1のマザーボードは珍しいのである。受付の奧にあるためサンの本社に用事がないとお目にかかるチャンスは無いかもしれないが、機会があったら一度見てみると面白いかもしれない。

さて、話が横道にそれたが、初めてSun-1に触れた時、興奮して徹夜をしてあれこれいじくりまわしたことを覚えている。今のパソコンにはおよびもつかない性能しか無いハードウェアであったが、質的変化は劇的でそれが興奮につながったのだと思う。

当時はNECのPC98というパソコンが登場した直後で、ほとんどの人はBASICを使っており、たまに上級者がCP/MやMS-DOSといった「オペレーティングシステム」を使っていたという状況であった。そんな中で僕は、大学で自由にUNIXを使い、さらに見学に行った富士ゼロックスでALTOというワークステーションの原型に触れることもできた。

UNIXで遊ぶためにわざわざ某出版社でバイトをしていた仲間が居たぐらいであるから、恵まれた環境にいたのは事実であろう。そんな環境の中にSun-1が持ち込まれ結構自由に使って遊んでいた。ネットワークが、ビットマップディスプレイが、などと自慢気に仲間に話をしていたのを覚えている。

当時僕が興奮するほどサンそして「ワークステーション」がもたらした質的違いとは何だったのであろうか?当時の自分の原稿を見てみると「ワークステーション」の定義をしているものがある。そこには3つの条件があって、「個人用の高性能計算機であること」「ネットワーク機能を持っていること」そして「マルチプロセス型のオペレーティングシステムを備えていること」とされていた。パソコンが登場していたとはいえ個人で当時としては高性能な計算機を利用することはなかなかできないことであったし、高性能であるからこそマルチウィンドウシステムやグラフィックユーザーインターフェイス(GUI)といった機能を利用することが可能となっていた。

また、ネットワークを経て他のワークステーションのCPUやディスクを使うことができたわけであるし、遠隔にいる仲間とメールや電子掲示板などでコミュニケーションを取ることができたのである。さらに、マルチプロセス型のオペレーティングシステムつまりUNIXを搭載していることは、利用者とコンピュータのインターフェイスのあり方の一つを示していたわけであるし、今でいうところのオープンソースソフトウェアへとつながっているのである。

いずれも今のインターネットを核としたコンピュータ環境の草分けであったと言えるであろう。当時中心的であったメインフレームの時代から、今のネットワークの時代への転換期であり、その感触が当時の興奮へとつながっていたのだと思う。

サンは、そうした時代から今までをリードしてきたコンピュータの一つである。だからこそ「憬れ」だったのである。今、インターネットも情報環境も大きな転換期を迎えている。サンという存在も一つの転換期を迎えているのかもしれない。その中で、我々もサンも次の時代を担う新たな質的変化を演出していければと考えている。

次の時代でも「憬れ」であるために。

※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
また、日本サン・ユーザ・グループは2007年6月をもって休会しております。

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