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オープンソースプロジェクトの翻訳作業を支援するサン 第2回 ~サンの翻訳の方針とノウハウを公開~
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オープンソースプロジェクトの多くは、慢性的な人手不足にある。これは、ドキュメントやソフトウェアの翻訳でも同様だ。サンは、自社で使用している翻訳支援ツールと翻訳のノウハウを公開している。これをうまく活用できれば、翻訳作業の効率アップが図れるのでないだろうか。この記事では、前回の翻訳支援ツールに引き続き、サンの翻訳方針やノウハウなどを紹介する。

2005年12月13日、日本Linux協会のOpen Source Documentation Meetingは、「サン翻訳支援環境に関するセミナー」を開催した。これは、主にオープンソースに関わるドキュメント翻訳者に向けて、サンの公開した翻訳支援ツールと翻訳ノウハウを紹介したものだ。講師には、サン製品の日本語化の品質について責任を持つ斎藤玲子があたった。

セミナーは、オープンソースのドキュメントの品質や利便性の向上のために、横断的な協力体制が作れないか、という目標の一環として開催された。どのOSSプロジェクトでも、次のようによく似た問題を抱えている。

  • 翻訳に参加してくれる人が多くない
  • 翻訳文のスタイルにバラつきがある
  • 早く、たくさん翻訳したい
  • 表記が揺れる、用字/用語が揺れる
  • 効率よく作業するための支援ツールを使いたい

翻訳支援ツールについては、前回紹介したOLTの他に、KDEのKbabelomegaTといった、いくつかのツールがオープンソースになっている。また、沖電気の訳してねっとのような翻訳支援サービスも存在している。

しかし、あくまで各OSSプロジェクトが個別に対応しているのが現状だ。これを、横断的に取り組むことで、より効果的にドキュメントの翻訳を行えるようになる。

「使用に耐える品質で、より多くのものをより早く提供する」
セミナーの冒頭、斎藤は、サンの翻訳方針をこのように説明した。サンが翻訳しているソフトウェアやドキュメントは、小説やコラムのような読み物ではない。実際に使用するものであり、製品を実際に使える素材として仕上げていく必要がある。

実際の翻訳作業は、ほぼ100%翻訳会社に外注している。サンとしては、翻訳会社から上がってきた翻訳物をできるだけ手間をかけずに利用したい。しかし、翻訳会社によって、スタイルや品質がバラつくことが考えられる。そこで、サンでは「日本語スタイルガイド」を翻訳会社に渡して、一定のスタイルの翻訳物を納品してもらっているという。

このスタイルガイドは、日本語の文体や定型の訳文を整理したもので、どのドキュメントを読んでも、表現(Look&Feel)に統一感を与えるという効果を持つ。ただし、スタイルはあくまで指針であり、絶対にこのようにしなければいけないという物ではないと言う。

このスタイルガイドは、サンからの提供を受けてOpenOffice.orgプロジェクトやGNOMEプロジェクトで公開されており、誰でも閲覧できる。

このほかに、英語でドキュメントを書く場合のスタイルガイドもあり、これはツールを使って自動的にスタイルをチェックすることができるという。

OSSプロジェクトにおいても、ドキュメントの翻訳を複数人で分担すると、表記や用語が揺れたり、訳文のスタイルがバラつくといった問題が発生する。しかし、このようなスタイルガイドを事前に用意しておけば、問題が起こりにくくなる。

そこで、サンの日本語スタイルガイドから、掲載されているスタイルの一部を紹介しよう。
まず、章、節、項のタイトルの用語は、次のように統一されている。このとき、特に指定がない限り、章タイトルは「体言止め」、節や項のタイトルは「である」調または「体言止め」で統一している。

章、節、項のタイトルの訳文例
英語例
翻訳例
Preface
はじめに
Glossary
用語集
Audience、Who Should Use This Book など、
そのマニュアルの対象読者を記載している項の表題
対象読者
Assumptions、Before You Read This Book など、
そのマニュアルを理解するための前提条件を記載している項の表題
お読みになる前に
Book Organizations、How This Book Organized など、
そのマニュアルの内容構成を記載している項の表題
内容の紹介
Conventions、What Typographic and Symbols Mean など、
そのマニュアルが従っている表記上の規則を記載している項の表題
表記上の規則
Further Documentaion、Related Books、Referenced Documents など、
そのマニュアルに関連するマニュアルを記載している項の表題
関連マニュアル
General Information、Overview
概要
Limitations
制限事項

文中の「must」や「can」といった助動詞にも、訳文例が用意されており、文末や導入部の表現を統一している。ただし、文末に同じ表現が続くときは、不自然にならないように工夫する、としている。

助動詞について同じ表現を使う
意味
英語表現の例
日本語表現の例
強い指示・要求
be sure to、make sure、ensure
必ず~してください、~することを確認してください
指示・要求
must、have to、please
~する必要があります、~します、~してください
提案・推奨
should、recommended
~するべきです、~するべきではありません、~するとよいでしょう、~することをお勧めします、~するようにしてください
強い禁止
must not、should never be、never
~してはいけません、決して~しないでください
弱い禁止
do not、is not、may not
~しません、~しないでください、~(では)ありません
許容
can、may be
~してもかまいません
可能
can、is able/possible to
~できます
不可能
cannot be、may not
~できません
可能性
can、may be、might be、possible
~の可能性があります、~の場合があります、~こともあります
導入
The following shows
~は次のとおりです、次に~、次の~

この他に、送りがなのルールやエラーメッセージのスタイルのように、多くのルールが用意されている。
オープンソースプロジェクトの翻訳者が、このようなスタイルガイドを利用するのは大変かも知れないが、翻訳支援ツールと組み合わせることで、それほど手間をかけずに翻訳スタイルの統一が可能になる。また、翻訳者にとっても、定型文をどのように訳すか迷う場面が少なくなり、結果的に翻訳作業の効率が良くなる。

ここ最近、サンは「Participation Age(参加の時代)」というキーワードと共に、多くの分野で自社のツールやソフトウェアを公開してきた。翻訳ノウハウの公開も、その流れに沿ったものだ。
「私は翻訳に関わっているので、翻訳面でコミュニティに対するサポートができないか、もっとコミュニティを育てていって、開発を含めて一緒に作っていけないかと考えている。自分たちのツールが育ってくれたらうれしいし、そのために、この用語を追加して欲しいといったリクエストにもできるだけ応えたい」と斎藤は語った。

サンでは、オープンソースプロジェクトの翻訳者を支援というポータルページも立ち上げたいと考えているという。ここには、サンが扱っている、日本語を含む主要9言語のLanguage Lead(ランゲージリード:その言語の翻訳品質の責任者)が参加する。最新のスタイルガイドやツールも公開していく。現状では、まだ公開されていないが、翻訳データベースも公開する可能性もあるという。

このようなリソースは、利用してこそ意味がある。参加の時代を作り上げるのは、エンジニアや企業だけではない。あなた自身の参加も期待されているのだ。

ブログ紹介:

What's Translation@Sun さいとうれいこのブログ

サンのドキュメントをローカライズしている部署で、日本語Language Leadという仕事をしています。
Solaris、Java、Sun Java Enterprise Systemなどの各種プロジェクトを横断的にみて、日本語の翻訳品質の管理をしています。
毎日触れる翻訳の中で、また、サンで使用している翻訳支援ツールについて、面白いと思ったことや困ったなと思ったこと、色々と発信していきたいと思っています。

※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
また、日本サン・ユーザ・グループは2007年6月をもって休会しております。

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