コンピュータプロセッサの高性能化には、大きく2つのアプローチがある。高速化と並列化だ。これまで主流だった高速化アプローチは、消費電力の増加によりコアが融解しかねないところまで到達し、行き詰まりになったように見える。これに対して現在話題になっているのが、並列化アプローチだ。特に、ひとつのプロセッサダイ(土台)に複数のコア(処理ユニット)を搭載するマルチコアと、1つのコアで複数のスレッドを並列処理するマルチスレッディングが注目を集めている。 サンのUltraSPARC T1プロセッサは、マルチコアとマルチスレッディングを組み合わせた「CoolThreadsテクノロジ」を搭載している。 「Sun Fire T2000の解説及びデモ」セミナーを開催
2006年2月6日、日本サン・ユーザ・グループは、UltraSPARC T1プロセッサを搭載したSun Fire T2000に関するセミナーを開催した。このセミナーの目玉は、さっきまで動いていたプロセッサに「実際に触る」というものだ。そのため、通称「ナイアガラに触ろうセミナー」と呼ばれている。 ナイアガラ(Niagara)とは、UltraSPARC T1プロセッサの開発コードネームである。コードネームの由来がこの記事に書かれているので参考にしてほしい。このような開発コードネームは、通常マーケティング的な理由で製品化の後は表に出ないのだが、UltraSPARC T1プロセッサにおいては、どうやら例外のようだ。同様のセミナーは、昨年から何度か開催されており、非常に好評を博しているという。そこで、今回NSUG会員を対象として開催されることになった。 デモンストレータには、サンのクライアント・ソリューション統括本部、iForceソリューションセンターの後藤 啓一があたった。 セミナーの冒頭で、UltraSPARC T1プロセッサの実物が回覧された。これは、1辺が5~6センチほどの正方形のセラミックパッケージで、手に取ると、ちょっとした重量感とヒンヤリとした冷たさを感じる。サーバの中をのぞいたことがある人でも、ヒートシンク(放熱板)の下にあるプロセッサの実物を目にする機会は少ないだろう(もちろん、これでナイアガラを触ったということではない)。 UltraSPARC T1プロセッサのコンセプト セミナーの前半では、UltraSPARC T1プロセッサのコンセプトとSun Fire T2000の製品を紹介した。 マルチコア・プロセッサでは、シンプルで小さなコアを採用する。このようなコアは、多機能なシングルコアと比較すると性能は落ちるが、それほど落ちる訳ではない。その低下分は、複数のコアを搭載することで逆転できる。 次のグラフを見て欲しい。ダイあたりのコア面積の割合とスレッドあたりの性能は、必ずしも比例しない。1コア=1ダイだった数年前のプロセッサを1.0とした場合(A点)、コア面積50%でもスレッド性能は90%になる(B点)。コア面積10%では、スレッド性能は50%になる(C点)。 UltraSPARC T1プロセッサのコアは、コア面積10%を少し越えている(D点)。性能の低下は50%ほどだが、1コアで4スレッドを実行可能になっている。UltraSPARC T1プロセッサでは、このコアを最大8個搭載している。つまり全体では、16倍の性能を示すことになる。 UltraSPARC T1プロセッサでは、このようなシンプルで小さなコアにするため、パイプラインは6段と短く、Out of Order機能を搭載していない。また、コアに搭載しているL1キャッシュも小さくなっているという。 Sun Fire T2000デモンストレーション
プロセッサに触ろう
今回のセミナーを通りすがりに覗いたとしたら、非常に地味な印象を受けるだろう。スループット測定デモでは、いくつかのターミナルウィンドウが開いているだけ。スレッドを表す緑色のバーにしても、上に貼り付いてほとんど動かない。プロセッサに触るという体験は珍しいものだが、実際には排気に手をかざし、ヒンヤリするヒートシンクを触るだけだ。 しかし、見かけが地味だとしても、その意味するところは地味ではない。それは、ターミナルウィンドウを食い入るように見つめていた参加者の皆さんにも伝わっていたと思う。マルチコア&マルチスレッディングなコンピューティングは、大規模サーバで恩恵を受けやすいと言われているが、仮想コンピューティングをサポートするSolaris10では、その対象は幅広くなる。シンクライアントを利用すれば、エンドユーザのコンピューティングも対象になるだろう。 3Dグラフィックや派手な音楽、陽気なジョークを伴うデモは楽しいが、参加者は思考停止しがちだ。それに対して、ストイックなデモでは、参加者の頭脳がフル回転して熱くなっている。ナイアガラのセミナーは、セミナー自体が"クール"なのだ。 なお、本デモンストレーションは、東京CBCで通常行っているものであり、担当営業経由で申し込みを行い、見学することができる。NSUGでは、このような面白い話題を会員向けに提供している。参加しておけば、最新の話題に接することができる。 ※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
| Sun Fun Times
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||