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~奈良先端科学技術大学院大学 編~
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奈良先端科学技術大学院大学のコンピュータ環境についてレポートする
Sun&Users 学舎探訪記スタート!
人材育成、最先端の研究が行われる学舎(まなびや)を訪ね歩くSun&Usersの新コーナーです。第1回目は、奈良先端科学技術大学院大学のレポート。150Tバイトのファイルサーバを備える学内システムや、ユビキタス研究の最前線をレポートします。
奈良先端科学技術大学院大学 校舎

3月27日に開業した「けいはんな線」鉄道マニアの皆さんにまじって一枚 セグウェイに乗って案内してもらった訳ではないので、念のため
3月27日に開業した「けいはんな線」、鉄道マニアの皆さんにまじって一枚 セグウェイに乗って案内してもらった訳ではないので、念のため

3月27日、快晴。新大阪駅から1時間ほどで、けいはんな線の学研北生駒駅に到着した。春先ということもあり、風が少し強い。

この日、大阪市営地下鉄中央線と接続する近鉄東大阪線(長田-生駒)が、奈良市の学研奈良登美ヶ丘駅まで延長した。これに伴い改称したのが「けいはんな線」だ。開業日ということもあり、多くの鉄道マニアの皆さんが写真撮影に訪れていた。

奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)は、この学研北生駒駅にほど近いところにある。学部を置かない大学院だけの国立大学で、情報科学・バイオサイエンス・物質科学の各先端科学技術分野について研究・教育を行っている。

今回、同大学情報科学研究科教授である砂原秀樹先生にコンピュータ環境について案内して頂いた。

大学のコンピュータ環境は、大きく「教育系」「研究系」「事務系」に分類できる。奈良先端大は、学部を持たない大学院大学であり、研究系のコンピュータ環境を強化している。

奈良先端大のコンピュータ環境は、「曼陀羅」システムと呼ばれ、全学共同で使用できるよう最新鋭の機器を備えている。

曼陀羅システムを構成する、ストレージ群は150テラバイトの容量を誇るという。この広大な領域は、ファイバーチャネルで接続された 105台ものSun StorEdge 3510 FCで構成され、SAN(Storage Area Network)環境として、キャンパス中に公開されている。

奈良先端大の「曼陀羅」システム Sun StorEdge 3510 FC によるファイルサーバ 裏側は、ファイバ・チャネルですっきり
奈良先端大の「曼陀羅」システム Sun StorEdge 3510 FCによるファイルサーバ
このラックのほとんどが、ファイルストレージ。
150テラバイトの容量を誇る。
裏側は、ファイバ・チャネルで意外とすっきり

ひとくちに150テラバイトといってもピンとこないが、CD-ROMに換算すると22万枚分、新聞に換算すると20万年分になる。20万年前というと、ちょうどアフリカに人類が登場したころになるらしい。だから、マンモスを食べたとか、ギザのピラミッドの3段目を積んだとかいったニュースを掲載した新聞を、全て収められるってことなんだろうか。

実際に、どのようなことに使っているか伺ってみた。
「中身については、あまりよくわかっていません(笑)・・・従来と異なり、容量について気にしなくなったおかげです。画像や自然言語の音の断片など、いろいろなデータが入っているはずです。すでに、150テラバイトの半分くらい使用しています。」(砂原)

このファイルサーバでは、RAID5とミラーリングを使用しているので、実際の容量は212テラバイトになるという。以前のファイルサーバ(12テラバイト)では、バックアップを取っていたが、150テラバイトではバックアップを取るだけで大変なので、現在は取っていない。とはいえ、導入して1年ほど経つが、特に困ったことは起きていないとのことだった。

仮想マシンサーバになるSun Fire V20z
仮想マシンサーバになるSun Fire V20z

情報科学研究科は、コンピュータによる情報処理を研究するところなので、当然、多くのコンピュータがあると思っていた。

しかし、研究用のコンピュータとしては、台数としてはそれほど多くないという。代わりに、Sun Fire V40z及びSun Fire V20z で構成されたサーバが設置されている。このサーバでは、VMWare ESX serverにより多数の仮想マシンを起動できる。つまり、このサーバが、数十台分のコンピュータとして動作するのだ。

このような仮想マシンを組み合わせることで、ネットワークの実験をダイナミックに行ったり、1秒間に何万トランザクションといった処理を実験・解析できる。研究のために実際にネットワークやコンピュータを設置する必要はなく、目的にあわせてリソースを取得可能になっている。

「コンピュータを集約したおかげで、昔と比べて管理が楽になりました。現在は情報科学センターのシステムを9人で管理しています。」(砂原)

研究室では、一人一台のSun Ray 1gシンクライアントを備えている。ここから、ネットワーク経由で情報科学センターを利用する。
研究室では、一人一台のSun Ray 1g Thin Clientを備えている。
ここから、ネットワーク経由で情報科学センターを利用する。

情報科学研究科の研究室と事務系のデスクトップには、一人一台のSun Ray 1g Thin Clientを配備し、Solaris と Windows のコンピューティングリソースをサーバに集約している。そのためにセキュアであり管理が容易になっている。静かで熱も出ず環境に優しい。

ここから、転送速度10Gバイトという高速バックボーンネットワークを経由し情報科学センターのリソースを利用できる。事務系端末には、Sun Ray Server Softwareの一つの機能であるAccess Control Modeを利用し、Sun Rayの端末からWindows だけを利用している。フロッピーやUSBメモリとのデータのやりとりを防ぐことができ、個人情報等の情報漏洩対策にも役立つ。

「最近、大学ではあまりワークステーションは使いません。個別の研究用に導入する例はありますが、メールやWebのためには手元に必要ありません。おかげで、情報系は机の上が広くなりました。以前なら400~500台のワークステーションをアップデートするというような作業がありましたが、それもなくなりました。ただ、バイオや物理では実験器具などが多いので、まだまだ場所が足らないようです。」(砂原)

図書館のファイルサーバ
図書館のファイルサーバ

続いて、図書館の計算機室を見せて頂いた。図書館にも、高度な情報処理環境が導入されている。ここでは、雑誌や論文といった大半の本を電子化して保管している。

図書館のファイルサーバは、Sun Fire V880とSun StorEdge T3、テープストレージという構成になっている。40~50本ほどのテープがあり、それをディスクでキャッシュしている。これが、外からは1つのファイルシステムに見える。

雑誌や論文を電子化する手順は、次のようになる。まず、イメージスキャナにより画像データに変換する。これで、雑誌や論文の完全に読み込むことができるが、これだけではキーワードを検索できない。そこで、OCRを使ってテキストデータに変換する。テキストの認識率は、100%ではないが、検索用のキーワードを取り出すには十分だ。

図書館の情報端末 電子的に保存されている雑誌や論文をその場で検索できる。 物理的な本には、全てICタグが埋め込まれている。IDカードとICタグを利用して、貸出や返却は、カウンタにかざすだけでできる。
図書館の情報端末 電子的に保存されている雑誌や論文をその場で検索できる。 物理的な本には、全てICタグが埋め込まれている。IDカードとICタグを利用して、貸出や返却は、カウンタにかざすだけでできる。

このテキストデータと画像データをまとめて、PDFファイルとして保存することで、完全性と検索性を両立することができる。この検索システムは、図書館に来ることなく、各研究室やインターネット経由でも利用できる。

また、全ての授業をビデオ化して保存している。これは、授業アーカイブとしていつでも見ることができる、ポッドキャスティングによる配信実験も行っているという。一般向けに公開講座もあるので、あなたも視聴してみては如何だろうか


奈良先端大では、4年に一度システム全体を更新するのではなく、毎年何かを追加することで、システムの陳腐化を防いでいるという。しかし、ビジネス向けのシステムとは異なり、何か明確な使用目的をもって導入するのとは、少し違うようだ。最先端の研究環境では、何に使うか目的を限定するのではなく、何に使えるか発想を広げることが重要なのだという。

「新しく目新しい最新のものをもってくる、それは常に戦いです。その中で、一番苦労するのは、どんどん面白くなくなっていくことです。昔は、大学にしかワークステーションがありませんでしたが、今はパソコンのほうが高性能になってしまいました。だから、単にワークステーションを置くとかではなく、学生の見たこともないような、ヘンな面白いものを置きたいと考えています。」(砂原)

大学構内でユビコン2006に参加していたBUGオーケストラ
大学構内でユビコン2006に参加していたBUGオーケストラ
各セグウェイに音楽のパートを割り当ててあり、近づくことでセッションが可能になる

取材日には、けいはんな線の開業に合わせて、「COE Festival2006・ユビキタス祭」が開催されていたので、こちらもレポートしよう。奈良先端大において、ヘンな面白いものを用意すると何をやらかすか、その一端を伺い知ることができる。

「COE Festival2006・ユビキタス祭」は、文部科学省21世紀COEプログラム「ユビキタス統合メディアコンピューティング」が主催したイベントで、今年で3回目を迎える。NAISTに集う先進的な大衆が、ユビキタス社会というバーチャルな概念を具体的な形として体験する場であるという。

この日は、招待講演やCOEコアメンバー各研究室によるデモンストレーション、学内外の学生グループの参加によるユビキタス・アプリケーション・コンテスト「ユビコン2006」が行われた。


学研北生駒駅でお披露目された案内ロボット・イコちゃん 全方位カメラからの画像を、遠隔地でゴーグルを介して見るテレプレゼンスシステム
学研北生駒駅でお披露目された案内ロボット・イコちゃん 全方位カメラからの画像を、遠隔地でゴーグルを介して見るテレプレゼンスシステム
頭の向きに合わせて表示されるので、カメラを操作する必要がない
奈良先端大と駅の両方にシステムを設置していた

デモンストレーションは、学研北生駒駅でも行われ、駅の利用者も体験することができた。この日登場した案内ロボット「イコちゃん」は、カメラやセンサーにより人を見つけたり、人の動きに応じて目を動かしたり、タッチパネルから入力機能と音声発話機能を備えている。このロボットは、けいはんなロボット特区のロボット公道実験の一環として、駅での案内・誘導を行うという。このほかにも、デモンストレーションが披露され、子供や身体の不自由な方を含む多くの来場者が楽しんでいた。


大学と駅の経路に設置された無線LANアンテナ こちらは、大学に向かう丘に設置された準ミリ波帯無線データ通信システム
大学と駅の経路に設置された無線LANアンテナ
このようなアンテナが、大学構内と駅に至る経路に数百メートルごとに設置された
こちらは、大学に向かう丘に設置された準ミリ波帯無線データ通信システム
2キロほどの丘の間に、無線経路を設置する。アンテナの指向性が高く、高度な暗号システムを採用しているため、他システムからの干渉を受けたり、盗聴されることはほとんどないという。

ユビキタス祭で、個人的に印象的だったのは、無線ネットワークの環境だ。大学構内では、ユビコン2006のために、RFIDタグを多数貼付したり、無線LANのメッシュアンテナを設営したりといったユビキタス環境をサポートする設備が整えられていた。大学から駅に至る経路には、無線LANアンテナのほかに、2点間で無線経路を設置できる準ミリ波帯小電力無線データ通信システムも設置された。

ネットワーク環境の設営にあたった情報科学センターの辻井高浩氏は、次のように語ってくれた。

「インフラの設営は、いろいろと大変です。無線や移動体通信の場合は特に。理論上はうまくいくようアンテナを設置したはずだけど、実際にやってみると動かないことがたくさんあります。天候や地形、植物があったりするだけで違ってくることがあります。」

このような無線ネットワーク環境は、これ自体をデモしていたわけではないので、ほとんど注目を浴びていないようだったが、実は今回のイベントの要になっていたと思う。ユビキタス社会が実現するためには、今以上に無線ネットワーク環境が充実していく必要があることを感じさせた。

※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
また、日本サン・ユーザ・グループは2007年6月をもって休会しております。

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