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導入は、ひょうたんからコマ
今回の導入は、4年ごとのリプレースにあたる。当初は、それまで通り大きく教育系と研究系にシステムを分けるつもりだった。 教育系では、全学の学生に対してUNIXでのリテラシーとプログラミングの教育を行なうというカリキュラムが確立しているので、UNIXの導入は必須であった。 研究系では、これまでSGIのOrigin3400を並列計算サーバとして使っていた。そこに各社は、IA32サーバとLinuxを大量に並べるグリッドを提案してきた。 これまでも、研究室単位でグリッドを導入する例はあった。しかし、情報基盤センターとしては、汎用的に使用できないし、管理も大変になり、また電力や冷房もかかる。結局、物理的に入らないということになったという。 高田先生: 「一番最初の提案では、教育用の計算機を1台じゃなしに、授業ができなくなったりすると困るので、Sun Fire V490を3台くらい並べようとか考えてた訳です。でも、メインフレーム的に3台並べとくんだったら、Sun Fire E4900でも良さそうだと。で、ちょっと贅沢をしてSun Fire E6900が入るといいねぇ、という話になって来て。何とか入らないかな、と。頭下げて入るんだったら、オレいくらでも下げるヨ、と。 そういう話をしているうちに、今度はスーパーコンピュータの定義中の性能下限値が引き上げられたという話があって。じゃあ研究系もくっつけた方がいいね、という話になって。それなら、もう1個上だよ。Sun Fire E20Kという話になって。 それで話をしているうちに、ひょうたんからコマが出まして。え、そんな話にしちゃって良いんですかという感じで、ほくそ笑んだんです。」 土屋先生: 「教育系のシステムは、昔からSolarisを使っていました。だから、ひとつにまとめるときに、わざわざ授業の教材を作り直さなくていい、というのもあります。Solarisで勉強してきた学生が研究室に入って、研究用にまたSolarisを使う。いいじゃない、それでっていう、そんな感じですね。 あと、Solarisって、SunOSの時代から分散というのがキーワードのひとつだと思うんです。今回はサンを入れるんだけど、それに逆らっているという気はしてます。我々もスタッフの数が少ないけど、仕事は多いっていう台所事情があるんで、もう数を減らしちゃってハッピーになろうよ、という発想もありました。」 受け入れ態勢もぬかりなし
Sun Fire E25Kは、決して小さなマシンではない。そこで、どのようにして搬入するかという話になった。設置場所は、情報基盤センターの4階になる。 土屋先生: 「分解してエレベータで運べばいいんじゃないって言ったんですけど、分解するなって言われているというので。"じゃあ、壁に穴を空けましょうか"と営業の方からメールが来ました。」 高田先生: 「こんなこともあろうかと、搬入用のデッキを作っておいたんです、と返事をしました。」
1月上旬の搬入の日は、事前にマシンルーム内を決められた室温に調整しておいた。そこに、エアコン付きのトラックでSun Fire E25Kが運ばれてきた。温度差で結露しないないように、結構ギリギリまでドアを閉めておいて、出したらすぐ入れられるよう、クレーンで一気に上げるのだ。搬入用デッキには、高田先生が自前のヘルメットと命綱を付けて待機していた。通りかかった学生さんが、みんなで眺めたり、携帯電話のカメラで撮影していた。 しかし、トラックのドアがいっこうに開かない。 土屋先生: 「木箱がうまく取れないと言って、中でトンテンカンテンやっていて。その間ずっと待たされてました。」 岡野さん: 「ドアが開いたから入れるだろうと思ったら、また閉められてね。」
実際の作り込みでは、意外と苦労しなかった 実際の作り込みは、ネットワーク周りや認証系から順次設定していった。情報基盤センターでは、全学生と教職員に約7000個のアカウントは用意している。さらに、研究系の約100アカウントを移行した。そのために、運用管理サーバとしてSun Fire V20zを用意してSun Java System Directory Serverを導入した。 高田先生: 「一番大変だったのは、LDAPについて、ぼくらの頭の中が整理できていないことでした。LDAPを初めて使ったので、どういった管理の仕方をするかであるとか、あんまり見当が付いていませんでした。初期設定のままで行けるだろうかとか。それで、やってみたら、うまく行かないじゃないとか。それを確定するまでに時間がかかりました。 今回は、大きな計算機を1つ入れて、それを4つのドメインに分けています。そのうち1つは我々の管理用で、研究系が1つ、授業の管理と学生用に1つずつ。それに対応するLDAPのツリーを用意しました。このうち授業管理用と学生用は、行き来が頻繁なはずですが、そこはあまりキレイに整理できていないかも知れません。 そういう形に整理するために、泣く泣く切った機能というのがあって、使う人たちがそれをどの程度受け入れてくれるか。そのくらいならセキュアになって良かったね、と言われるかも知れないし。トンデモないことしやがって、と言われるかも知れません。」
土屋先生: 「パスワードの同期のところで細かなバグが出ていますが、後は思いのほかスムーズでした。動き始めたら、思いのほか苦労はしなかったな、という感じです。 よその話を聞いてみると、LDAPを導入して、うまくいっていないという話もありました。相性問題が絶対出るよって言われてたり。情報処理学会の運用系のところだと、LDAPがうまく動いたというだけで研究発表になるくらいなんです。だけど、うちは全然そんなことなくって、実はLDAP周りのエラーはほとんどありません。 1ヶ月のトッカントッカンで、よくここまで作って動いたなぁというのが正直な感想です。我々も、ここまでiMacとSolarisの相性がいいとは思っていませんでした。後ろにあるものがしっかりしているから、前を自由に安心して組めると言えると思います。Solaris9という、ある程度枯れたOSを採用したのも、よかったかも知れないですね。」 何か世界が違うなという感じです 実際に稼働し始めてみると、多くの利点を感じたという。
高田先生: 「私は、数万レコードのソーティングをやるんですが、やっぱり感覚が違いますね。キーボードを打ってから出てくるまでのタイムラグが、全然違うっていう感覚です。初めてやったときは、ちょっと驚いて、すぐにπを100万桁計算させてみました(笑)。私のプログラムは、数時間ででっち上げた、いい加減なものですが。E25Kは、すぐに返ってくるのに、部屋に置いてあるUltra 20はいつまでたっても返ってこなくて、むなしいんで止めてしまいました。」 土屋先生: 「ウィルスチェッカも、以前はP4プロセッサ2台のマシンで動かしていて、ロードアベレージ2~3で貼り付いていたのに、Sun Fire E25Kだとスカスカ動いていくんで、あーこれは楽だなぁという感じです。あと、メールボムってありますよね。大量にスパムメールを送りつけてくるという、いわゆる攻撃です。以前は、それを受けると凍ることがあったんですけど、今回は、まったくそれがありません。次の日にログを見て、普段12~13万通だったのが、18~20万通になっていて、あぁメールボム来てたのね、って感じです。」 丸山先生: 「それにI/O周りも早いですよね。バックプレーンは早いし、ディスクアクセスも早い。マシンを1台に集約したことで、管理もずいぶん楽になりました。」 演習教室には、iMacをずらり
教育用としては、演習教室が2部屋あり、それぞれ90名分のiMac G5を備えている。また、図書館の情報用自習室にも52席分のiMacがある。これらは、空いていれば、いつでも学生が使用できるという。ちなみに、省スペース化のために、キーボードは英語配列のHappy Hacking Keyboardを採用している。 iMacは、NetBoot方式で起動する。内蔵ハードディスクを使わず、Apple Xserver G5からOSやアプリケーションが起動する。また、Analog Work BenchやVerilog-HDLといった重いアプリケーションを使用する場合には、X Window systemを介して、Sun Fire E25Kを直接利用する。 高田先生: 「ユーザ受けしそうなiMacと、玄人受けしそうなSolarisの両方があるという感じです。Solarisアプリケーションに関して言えば、主記憶が大きく取れてなんぼというところがあります。その点、Sun Fire25Kは、352Gバイトの主記憶を搭載していますし、1ドメインでも120Gバイトの実メモリが使えます。 それを自由に使える環境は学内にも早々ないですし、学外を見てもそんなにないでしょう。世の中の流れとは少し違いますが、このセンターのオリジナリティをそういうところで出せればと思います。」 土屋先生: 「自宅から、Solarisの教室用ドメインにもログインできるんですよ。SSHでログインしてもらって、X11でSolarisを利用する。そうすると、Analog Work Benchを自宅で使っても良いわけですよ。我々としては、そういう使い方もやってもらいたいと考えています。大学柄、自宅でLinuxサーバ動かしているよ、という話も聞くので、自宅からログインしている人も少しはいるようです。まあ、気が付く人は少ないですし、WindowsからTera Termで入ってという人もいるんですけど。」 高田先生: 「大規模なシミュレーションが手軽になってきたのは良いんですが、それで全て分かった気になられてしまうと、実務をやるエンジニアとしてはまた問題があるかなぁ、と思います。 学科によるところもあるんですが、私の場合は、研究室に来る学生が、ハンダごても握ったこともないなんて言うと、ちょっとジェネレーションギャップに悩んだりもするんですけど…。コンピュータのシミュレーションばかりに慣れて、シミュレーションができたからそれでいいやと言っている人間が多いんですが、それは違うだろうと。ノイズの恐ろしさを知らないナ、と。 最近は、ロボットが人気ですが、あんなものはシミュレーションだけしても意味がないですよね。シミュレーションでおしまいというのは、図面だけ引いておしまいみたいなものですから、それはちょっと違うだろう、と。私たちは、物を作る楽しみみたいなものもわかって欲しいと思ってますから。 だから、そのシミュレーションと現実のギャップを理解した上で、今まで気軽にできなかったような大きなシミュレーションを身近にできるのであれば非常に良いことだと、思います。」 構想は膨らんでいく いよいよ本格的な運用が始まるが、新しいシステムの力量は、強く感じているという。そのため、次のステップへの構想も膨らんでいく。
才木さん: 「期待しているのは、リソースを動的に割り当てて、効率よく使うことです。教育系っていうのは、夏休みになると学生がメールをチェックするか、たまに宿題をやるために学外からログインするか、ここの実習室を使うかくらいで最低限になります。 その間、研究系に全部のリソースを注ぎ込むことができます。昔の奴みたいに、CPU時間をこれだけ使うと、いくらかかるというのはないので。基本料金だけで、うちは研究系が使える、と。じゃあ、夏休みは思いっきり計算して、秋口の発表に間に合うようにしようとか。たいてい、秋口にどこかで学会や中間発表があったりするので、そういうのに間に合うようにしよう。だから、夏休みはがんがん使っていくよう、これから宣伝していきます。」
丸山先生: 「あと、我々が今推進していることで、学内のセキュリティをちゃんとしようというのがあります。やっぱり分散の時代というのがありましたから、とりあえず手元にサーバを立てようというのが主流なんですね。そうすると、管理をしていた学生が出ていっちゃうと保守できなくて。何とかならないかって、言われることもあります。 そこで、早いマシンが買ってあるので、各研究室でサーバを持つのをやめましょう、みんなセンターを使いましょう、と。今回、研究系のドメインにActive!Mailを入れてあって、IMAPでWebメールをグリグリ動かそうというのを1個実験でやっています。そこを使えば、メールを読み書きする良い環境が一個手に入る。だったら、自分のところでサーバおいて、メールを読む必要ないですよねと。まあ、今回のシステムは、そのくらいのユーザでもへこたれないですし。」 土屋先生: 「あと話としてあるのが、事務系システムの統合です。事務系っていうのは、本館事務といって、個人情報とか入ったものが本館の中にいっぱいある。管理は、ちゃんとしているのだろうけれども、例えば、ノートパソコンを盗まれたらどうなるとか。我々の頭の隅にあります。 そこのところは、我々が実体を知らないので。それを今度調べることになっています。 そういった本館事務のデータをE25Kのドメインの中に突っ込んでしまいたい。今の調子だと、計算量は4年間十分ありそうですし。ボードを足しても良い訳です。ようするに、ここをデータセンターみたいにしたい訳ですよ。で、E25Kを中心に据えて、大事なデータは持ち出せないようにできたら良いなぁと。そうすれば、我々がきちんとスケジューリングしてバックアップできる。 できれば、本館事務においてあるWindowsパソコンじゃなくて、VID端末みたいなのにして、USBメモリも刺さらないようにすれば、データも漏れないかなと。データ持って帰れないから、ウチで残業できないと怒られそうですけど。 E25Kを入れたってことで、信頼性の9が後ろに一個伸びたかな感じています。その信頼性の上で展開できる新しいサービスっていうのも、あると思うんですよね。それを見つけていかないとなあ、というのが我々の感想です。」
高田先生: 「こういった計算機センターの計算機には、流行があると思います。計算機科学の流行と、計算機を道具として使う僕みたいな機械屋さんやなんかの流行ですね。 例えば、機械屋さんだと、飛行機の羽根の周りの空気がどう流れるかとか、偏微分方程式を延々と解いたりして、大規模なシミュレーションをやるわけですよね。で、そういうのが流行しなくなることもあります。うちの大学にくる機械の学生さんなんかだと、ロボットだとかそういうところをやりたがる。そういった波は、必ずあります。 でも、裏を返せば、いつそちらに戻ってくるかもわからない。だから、ノウハウがなくなってしまっても困ります。昔は、その用途に合わせたチューニングをやるのが名人芸と言われたり、それをやらないと計算できないというのが当たり前だったところがあります。 研究室って言うのは、昔の研究でやった成果を生かして、新しい学生さんがまたさらに一歩進むってことをやっています。昔動いたものも動いてくれないといけない。 今は、そこまでSolarisがやってくれます。主記憶の容量であるとか、並列に使えるCPUであるとか、まあ青天井に近い環境があります。巨大な配列を何も考えずに入れるとか、計算機のエキスパートでない人たちにとっては、非常に使いやすい環境になってると思います。 やっぱり一般的な物を特殊なものに変えるのは難しくて、特殊な機械で動いていた物をどんどん一般的なものに変えていく。そして、また特殊なものをやりたくなっても、汎用の機械だからちゃんと動きますよ。新しい物も組み込めますよ、というような形にしておきたい。だから、流行廃りに縁のない環境を用意しておくのが重要でしょう。そうするとベクトルプロセッサとかではなく、SMPのような一般的なプロセッサがいいというのが、一般的な流れなんだと私は思います。」 ※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
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