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~茨城県立勝田工業高校 編~
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茨城県立勝田工業高校
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7月上旬、上野駅からスーパーひたちで1時間強、茨城県ひたちなか市にある茨城県立勝田工業高校(以下、勝工)にお邪魔した。この日だけは、梅雨の合間の晴天が広がり、さわやかな風が吹いていた。
勝工には、機械科・電気科・電子機械科という3つの学科がある。このうち電子機械科は、コンピュータを使って機械を制御するといった技術を学ぶ学科である。生徒は、電子・機械・情報といった技術を全て学ぶ。このような学科は、茨城県の工業高校でも2校しかないという。
この電子機械科の実習室に、40台のSun Rayシンクライアントが導入されている。この実習室を使うのは、コンピュータとプログラミングの実習と、コンピュータ部である。また、朝と放課後には生徒が自由に使用できる。さらに、学校が休みで特別な行事のない土曜日には、「土曜日のコンピュータ部」として一般の参加者が使用している。

実習室には、田の字型に並んだ机に、40台のシンクライアントのセットが並んでいる。各セットは、Sun Ray端末本体と他社製の液晶ディスプレイ・キーボード・マウスで構成されている。隣をのぞいたり、向かい側の人と相談しながら、操作できる距離だ。配置密度は高いが、本体とディスプレイの設置面積が小さいため、机の上はさほど狭く感じない。

実習室にいたのは、この時15人程度。晴天と言うこともあり、窓を全開にした上で大きな扇風機を回しており、さわやかな風が入ってきていた。Sun Rayは、CPUやハードディスクなどを持たないことにより、熱を出さないので、クーラーを付けることは滅多になく、この程度の空調で快適に過ごせるという。また、Sun Rayにはファンがないので、PCにありがちな騒音もない。教室内はきわめて静かで、むしろ扇風機のほうがうるさく感じられるほどだ。

利用者は、実習室にやってくると自分用のICカードを受け取る。これをSun Ray本体に差し込むと、Solaris 10を利用できる状態になる。Windowsを起動するといった特別な操作は必要ない。データなども全てサーバ側に保存されているため、ICカードを別の本体に挿せば、自分のデスクトップ環境が、すぐにそちらに移動する。

黒板脇には、もともと授業用の道具などを置く物置だったという小部屋がある。ここに家庭用クーラーを設置して、サーバルームとして使用している。サーバには、Sun Fire V240Sun Fire V440を使用し、これにファイルサーバとして他社製のPCを加えている。ここから、100MのLANでSun Rayに接続している。

キャビネットには『サン・コーナー』も!?(Sunロゴ入りキティはレアグッズ)
キャビネットには
『サン・コーナー』も!?
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教壇に立つ森戸先生(白板に写るSolarisログイン画面にご注目)
教壇に立つ森戸先生
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熱を出さないSun Rayのおかげで扇風機で十分。窓からは爽やかな風が・・・
熱を出さないSun Rayのおかげで
扇風機で十分。
窓からは爽やかな風が・・・
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勝工では、実習室の環境を一般の市民にも開放して、『土曜日のコンピュータ部』を開催しており、このユニークな活動が地元の評判となっている。

これは、勝工の実習室を利用して、地域の方々のコンピュータ・リテラシーを高めようという一般向けのコンピュータ&ロボット教室である。「Windowsでないコンピュータを使ってみよう」と呼びかけに応じて多くの方が参加しており、今年で3年目になる。参加者は、子供から年輩の方まで幅広い。Sun RayとStarSuiteを利用して、ワープロや表計算・プレゼンテーションの練習をしたり、LEGO Mindstormを使ってロボットについて学習したりと、幅広い活動を行っている。

この日の参加者は、年輩の方、女性、少年、親子連れといった、老若男女の多彩な顔ぶれであった。これらの生徒さんのアシスト役を務め、顧問の森戸篤也先生の授業をサポートするのは、勝工コンピュータ部の部員の皆さんである。生徒の皆さんは、各々実習室にやってくると、ICカードを借りて、慣れた手つきでSun Rayに差し込んでいく。

この日は、夏休みに行う小中学校生向け講習会のリハーサルを兼ねてSqueakの体験学習が行われた。子供でも、落書きした自動車を1時間ほどでプログラミングして、画面で走らせることができた。

このSqueakというツールは、コンピュータ(すなわちプログラム)が、人の与える指示によってどういう挙動をするのかを学習するのに最適の素材といえる。コンピュータの全くの初心者から、ある程度プログラミングが出来る人にとっても興味深いツールである。

子供から大人まで楽しく学べるこうしたアプリケーションを選定して、市民の教室に導入している、森戸先生のコンピュータ教育に対する情熱とセンスが光る。

大人も子供もSqueakに夢中

大人も子供もSqueakに夢中

参加者に感想を伺ってみた。田崎さんは、すでにリタイアしながらも、放送大学と定時制高校で勉強しているという熱心な方。毎日インターネットをして、1枚モノのチラシくらいなら自分で作るという。
『参加して3年目ですが、なかなか・・・(笑)。そんなに難しくはないんですが、スラスラとはできません。この教室で気に入っているのは、どんどん聞けるところです。他のパソコン教室だと座って授業を聞くだけになりがちですし、長くいると同じ内容を聞く羽目になります。ここなら、自分なりにいろいろできます。生徒さんも丁寧に教えてくれます。』

小杉さんは、地元の金融機関に務める方。年賀状や挨拶状くらいはパソコンで作るが、職場では手書きの文章を他の人に入力してもらうことが多いという。
『Solarisは、インターネットを見たりワープロを使ったりする基本機能はほぼ同じなので、覚えてしまえば簡単だと思います。ただ、保存の操作や用語といった細かな点が違うので、使いにくく感じることもあります。練習する機会がなかなか持てませんし。今日のSqueakのように、子供たちは抵抗なさそうです。ゲームや遊びの感覚で、身体で覚えていくんでしょう。』

勝工コンピュータ部には、20名ほど部員がおり、活発な活動を展開している。「土曜日のコンピュータ部」の他、パソコン甲子園や組込系のプログラミング技術を競うETロボコン全国高校生プログラミングコンテストにも参加している。2005年度のパソコン甲子園では、ベスト8に入る成績を残している頑張り屋さんたちだ。文化部なので「所属していればいい」という感じで入部する人もいるが、そういう人はついて行けずに辞めてしまうという。

3年生の部員に話を聞いてみた。彼らが使うデスクトップは、アニメやマンガの壁紙が貼られてポップにカスタマイズされていた。

思い思いに自分のワークスペースを作る部員 中には自作CGを壁紙にする強者も

『Windowsのほうが使いやすいという人もいますが、Solarisに慣れれば使えると思います。特に、ICカードで席を移動できるのは便利です。土曜日のコンピュータ部では、普段は生徒が講師役を務めます。3時間分のテキストを自分たちが用意して、自分たちで説明します。自分で調べないといけないので、とても勉強になります。あと、しゃべるのが不得意な人には、そういう練習にもなります。今は、全国高校生プログラミングコンテストの課題で、Javaプログラミングを勉強しています。そのうちJavaでシューティングゲームを作りたいと思っています。』(部長の高田さん)

実習室のSun Ray導入で中心的な役割を果たした電子機械科の森戸篤也(もりとあつや)先生に、導入の経緯と運用状況を伺った。

『現在のシステムは、3年前に導入しました。当校は、10年ほど前、PC-98+MS-DOSが主流だった時代に、かなり早くWindows3.1を導入したんですね。これからはコマンドラインの時代じゃなくて、GUIだろうと考えたんです。これは結構先進的だったらしく、パソコン雑誌が取材に来たこともありました。

ただ、パソコンの管理は大変でした。パッチを当てたり、セキュリティ対応したり、40台を入れ替えるのは大変な作業でした。こうした運用管理の作業に多大な時間を取られてしまい、"教師はSEじゃないんだ"、と言いたかったです。現在もWindowsを使っている学校では、リブート時にまっさらな環境に戻したり、全員が同じデスクトップのデザインで使ったり、あれはやっちゃだめ、これは触ってはいけない、と使い方に制限を設けて生徒に不自由な使い方をさせているところが多いと思います。』と森戸先生は当時の苦労を振り返る。

『新しいシステムを導入するにあたって、当初からUNIXかLinuxを入れることを考えていました。小学校や中学校でもWindowsは教えているし、覚える機会はいくらでもあります。だとしたら、次の10年を考えて、工業高校ではWindowsじゃなくても良いんじゃないか。Webサーバ系では、Linuxが主流になっているし。ここで違う環境に慣れておけば、Windowsじゃないコンピュータを見ても、生徒もビックリしなくて済むでしょう。私自身が、Linuxに少し慣れていたというのも、理由のひとつです。

"電子機械科に導入するマシンなら、良いんじゃないですか。"ということで、特に反対もありませんでした。組込機器の開発機材が、Windowsにしか対応していないことが多いので、数台のWindowsマシンがありますが、それ以外は、管理が楽になるSun Rayを導入することにしました。

導入当初は、必ずしも安定しているとは言えないこともありました。40台同時にログインすると不安定になったり。それを調整したり、同時にログインしないようタイミングをずらしたりして、何とかなるようにしてきました。現在は、Solaris 10にバージョンアップして、そういうことはなくなりましたし、パフォーマンスも良くなりました。』

『使い方には、あまり口を出さないようにして、自由にやらせています。ここでは、生徒用にユーザーアカウントを一人ひとつ用意してあります。ICカードを持たせてしまうと、無くす人がいるかも知れないので、それはこちらで預かって、使う時に渡します。

最初は、インターネットもできない状態にしておきます。それを授業の中で、設定していきます。そのあとは、どうカスタマイズしていくか生徒の自由にして、同時に自己責任ということも教えます。そうすると、ツールバーの配置が違うなどといった質問が出なくなります。生徒も安心して使えるし、教員も注意しなくて済みます。だから、シンクライアントといっても、自分専用のPCのように使っています。これだと、40台のPCを全生徒で共有するよりも、融通が利くんですね。最近では、生徒もすっかり慣れていて、ディレクトリの権限を甘くして、レポートをコピーさせたりなんてこともやっているみたいです。』

実習室の利用実態について伺ったところ、森戸先生は胸を張ってこう答えられた。
『実習室の使用頻度は、かなり高いです。週の2/3は授業が入っていますし、選択科目にも使います。それから、朝と放課後は自由に使って良いことになっています。空いている日は、ほとんどありません。』

この実習室が、教育関係者の注目の的となり、県の教育委員会など数多くの方々が見学に訪れているという。
また、高校生の取り組みとしては、かなり先進的といえる各種のアプリケーションの使い方についても、披露していただいた。

『アプリケーションで、困っているものはありません。Solaris用とJavaのアプリケーションでそろってしまいました。ワープロと表計算は、StarSuite8を使っています。今年から、1年生は全員StarSuiteで授業しています。デジカメで写真を撮って、インターネットにアップして。最終成果をPDFにしてメールで提出させます。また、StarSuite検定を奨励しています。この他に、グラフィックツールのGIMPやアイデアツールのFreeMindも使っています。プログラミングの授業では、統合開発環境を使いません。ターミナルとテキストエディタを使います。あとは、UML図を描くためにJUDEというUMLモデリングツールを使っています。』

『実は、管理はほとんどやっていません。年度の変わり目にまとめて、SIベンダーさんに依頼しています。ユーザ登録とアプリの追加も、その時にやってもらいます。この3年間で壊れたことは一度もありません。Solaris 9を10にアップグレードしたので、パフォーマンスも向上しました。特定の生徒の環境が動かなくなることもあるけど、それは自己責任と教えています。おかげで教員は、本来の授業に集中できるようになりました。

Sun Rayを導入してから、本当に楽になりました。Windowsを管理していた頃の辛いことは忘れちゃいました。管理の手間がかからなくなり、その分、教員本来の仕事ができるようになりました。余裕ができたのは、Sun Rayのおかげかも知れません。』

『要望としては、Solaris導入の敷居が低くなったらいいなと考えています。夏休みに自作PCの組み立て講座をやるんですが、低価格のPCでは、やはりSolarisは重いので。せめて、FedraCore程度になればいいなと思います。』

森戸先生は、校外活動についても楽しそうに語って下さった。現在は、茨城県高等学校文化連盟でコンピュータ部の事務局を務めている他、個人で電子工作コンテストに参加し、「簡単!ライントレーサ・コンピュータ」という作品で、高校生向けキット部門賞を受賞している。

『インターネットのおかげで、外に出て人とコミュニケーションするのが、とても楽になりました。生徒にも、そういう機会が増えています。ETロボコンでは、企業の参加者の話を生徒が直接聞きにいっています。UML図でこういう図は使うけど、こっちは使っていないとか、そういう生の声を聞く機会も増えて、とても役に立っていると思います。』

『当校の実習室に興味を持たれた方は、いつでも見に来てください。』

勝工の取り組みに関心を持った方、さらに詳しいお話を聞きたい方は、ぜひ、森戸先生の主宰するブログをご覧いただき、コメントされることをお勧めしたい。


※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
また、日本サン・ユーザ・グループは2007年6月をもって休会しております。

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