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~東京工業大学 学術国際情報センター(GSIC)編~(後編)
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スーパーコンについて

東京工業大学が主催するスーパーコンピュータを活用した高校生を対象としたプログラミング・コンテスト、通称“スーパーコン”についてお話を伺いました。

スーパーコンピューティング・コンテストを略して、“スーパーコン”と言います。
別名「電脳甲子園」とも呼ばれています。

  公式ページ:スーパーコンピューティング・コンテスト(電脳甲子園)

コンテストの実施方法は、高校生2~3人でチームを構成してもらい、まず予選を行います。予選は、予め出題された課題を解く為のプログラミングをチームで作成し、その解答を電子媒体で送ることで参加応募となります。その中から上位10組が選ばれ、本選へと進みます。本選では、各チームが会場となる東京工業大学に集まり、会場のスーパーコンピュータを使ってプログラミングを競い合うことになります。

本選で出題される課題は、プログラミングしていて楽しくなる様、クイズ形式にしていますが、背景には量子力学、数学、化学、情報などその時々の最先端の理論をベースにしています。他のテスト形式のコンテストと異なり、問題作成者自身も、「正解は何か?」「どんな解法が最も良いか?」わからない場合もあり、問題作成者にも思いつかない解法のプログラムが高校生から提出されて驚かされることもあります。

コンテストは朝の8時から夜の8時まで、4日間かけての大変な長丁場で行われますが、休憩時間には、参加者同士、自分がどこまで進んだかなど自慢し合ったり、掲示板に記録を書いたりして、和気藹々と楽しそうに競い合っています。

最終的なコンテストの審査は、各チームから提出されたプログラムの正確さ・速度を審査し、審査用の問題例を使っての評価により順位が決定されます。

本選でのプログラミング環境ですが、1995年の第1回から第5回まではCrayのC90というべクトル・マシンを使用しました。
2000年の第6回からSGIのOrigin 2000というハイパーキューブで接続されたマルチプロセッサ上でのMPIを使ったパラレル計算になりました。

そして2006年の第12回は、東京工業大学と大阪大学サイバーメディアセンターの2会場で同時に開催することになり、TSUBAMEの44ノード、704CPUを使用してリモートで実施しました。表彰式も“PolyCom(遠隔TV会議システム)”を使って行われ、東京にいる学長がPolyComの先にいる優勝者に向かって賞状を差し出すと大阪会場で受け取るという演出もありました。

高校生がコンテストでスーパーコンピュータを使うにあたり、初日に講習会も実施しています。今年は、TSUBAMEの複数のCPUを使う為に、MPIのライブラリを使ってプログラムを書く必要があり、MPIのプログラムの講習も行ったのですが、初日の講習だけでMPIによるプログラミングを自然に受け入れてくれた高校生の対応能力には、非常に感心しました。

課題の作成についても工夫が必要です。パズルなどは人間がやるには楽しいものも、プログラムで解くには、極端に簡単になるか難しい問題になってしまい出題には向きません。
過去の大会では、箱詰めパズルの問題を出したこともありますが、なるべく専門的な、最先端の科学を絡めた問題を学生に出題しています。

松岡 聡 先生
松岡 聡 先生
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渡辺 治 先生
渡辺 治 先生
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松田 裕幸 先生
松田 裕幸 先生
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遠藤 敏夫 先生
遠藤 敏夫 先生
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西川 武志 先生
西川 武志 先生
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本選の課題は、“全て重さが異なる40個の石の中から、目標となる重さを与えられた場合に合計がその重さになる様な石の選び方を求めるナップザック暗号をベースにした問題”や、“三角形のビリヤード台で、どこからどの角度でスタートすると、124回壁にあたって元の場所に戻るかを求める量子力学からヒントを得た問題”など、興味深い課題が出題されています。以下に、近年出題された課題をご紹介します。

  • 2006年「計算機間ネットワーク設計問題」
  • 2005年「スポーツ・スケジューリング」
  • 2004年「暗号化された画像の解読」
  • 2003年「ゲノム解析:最大タンパク質ファミリーの探索」
  • 2002年「格子タンパク質の基底状態探索」

スーパーコンや過去に出題された問題に興味を持たれた方は、
書籍『スーパーコン甲子園~プログラミング大好き高校生たちの挑戦!』
松田裕幸+渡辺治 日本評論社ISBN 4-535-78433-7を是非ご覧ください。
また公式ホームページでも過去の問題や解説、優勝したプログラム等を参照できます。


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スーパーコンを始めた理由ですが、皆にプログラミングを楽しんで好きになって欲しいという単純な動機からです。昔は高校生でも小さなPCでTVゲームの様なものを作っていました。そういうものは今の高校生でもきっと面白いはずなのですが、世の中に非常に高度なTVゲームが普及してきた為に、敷居が高すぎるのか、ゲームやプログラミングを一から作ろうという発想にならないのです。適当な環境と課題があれば、今時の若い人たちも作る楽しみを味わうことができるのではないかと考えました。

本選でスーパーコンピューターを使うことについても、パソコンが乗用車ならば、スパコンはレーシングカーです。スパコンもパソコンも原理は一緒なので、プログラミング好きな高校生ならば十分使うことができるはずです。しかし、その性能を引き出すには、技術やアイデアが必要となります。技術については、初日の講習会で指導しますし、コンテスト中もチューターの大学院生がアドバイスを行います。ただし、「アイデア」は、参加者本人のもの。頭を捻って斬新なアイデアを出し、それをうまくプログラムに結びつけることでスパコンのスーパーな性能を引き出す楽しみを感じてもらいたいのです。

応募数が少ない理由は単純で、高校生でプログラミングをやっている人は全国的に今のところ100人位のレベル、一つの学校では、2~3人片隅にそっといる程度です。しかも、予選は、問題の解答を以って応募するので、最初から解けないと応募できないのです。今年の予選問題は、簡単だと思っていたのですが、どうも応募者にとっては難しかった様で、応募が集まるかが不安でした。今年は、結局19組しか応募かなく、殆ど全員が本選に参加できました。
問題を作る上では、数日かけて様々な方面からアプローチしていくタイプの問題を選んでいるので、短時間で解ける様な簡単な問題は避けています。参加者の人数は増したいのですが、スーパーコンを始めた主旨を考えると今の問題のスタイルは変えたくはないですね。

現在、世界では、高校生を対象とした数学・物理・化学・情報・生物・天文の6分野のサイエンスオリンピックがあるのですが、今年は10年ぶりに「国際情報オリンピック」という国際大会に日本からも参加しようということで、早稲田大学の守屋先生が中心になり、メキシコ大会に4人が参加しました。

  情報オリンピック日本委員会 ホームページ

そこで金メダルが2名、銅メダルが1名という華々しい結果を残すことができました。金メダルを取った一人はスーパーコンで今年2位になったチームの一人、高田高校の片岡君で、スーパーコンで優勝した今城君は銅メダルでした。

情報オリンピックを世話している先生方からは、「急に情報オリンピックへの参加を決めたにもかかわらず、これだけの好成績を残せたのは、今までスーパーコンをやっていたという土壌があったから良かったのではないか」と言っていただき、スーパーコンの地道な活動が、高校生達にプログラミングの面白さ知ってもらい、アイデアや根気を引き出すといった本来の目的に少し近づいていることを実感できました。

スーパーコンでは、今年からTSUBAMEを使ったわけですが、実際にスーパーコンの参加者に「TSUBAMEを使ってみてどうでしたか」と聞くと、「すごく使い易くて、家のパソコンと変らない。ただし物凄く早い、無限にというか非常に奥深く早く感じる」というコメントを聞くことができ、高校生がその様に感じてくれたのは、我々にとってハッピーでした。今はコンテストの参加者は少数ですが、こうしてスパコンが身近になることで、プログラミングの面白さに目覚めてくれる高校生が増えることに期待したいと思います

CrayやOriginの時代はスパコンがパソコンとはあまりにも使い勝手がかけ離れていたのに対し、いまや誰もがパソコン感覚でスパコンが使える時代になったことを嬉しく思います。普通、スパコンというと、大学4年生どころか大学院生じゃないと使わせないという大学が結構多いのですが、東工大では、『皆のスパコン』をモットーにしているので、新入生から使うことが出来ます。1年生の学生が、趣味レベルでTSUBAMEのノードを使って並列コンピュータのプログラムなどを書いて遊んでもらうところから始まり、そのまま4年生の研究室まで使ってもらうことを目指しています。

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※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
また、日本サン・ユーザ・グループは2007年6月をもって休会しております。

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