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宇宙空間でタイムラインを制御するCosmo Scheduler D LG3Dは、サンのエンジニアが開発しているオープンソースの3Dデスクトップ環境である。デスクトップを完全に3D化するのではなく、既存のウィンドウを活用しつつ、ウィンドウの背面を利用可能にしたり、ウィンドウを傾けたりといった表現を可能にしている。試してみたいという方は、このあとのクイックスタートを参照して欲しい。動作環境としては、Linux・Solaris・Windows XPに対応しているほか、ライブCD版もある。 LG3Dは、2次元GUIと3次元GUIの中間、いわば2.5次元GUIとも言える存在だ。2006年12月にバージョン1.0がリリースされた。なお、LG3Dの誕生については、Sun Enterprise News「真に使いやすいデスクトップ環境を求めて:Project Looking Glass 誕生物語」が詳しい。 今回取り上げるCosmo Scheduler D(CSD)は、このLG3D用のスケジュール管理アプリケーションである。太陽系を模した独特の画面を持っており、各予定を惑星として表示する。スケジュールを円軌道として立体的に表示するため、近くの予定を大きく、遠くの予定を小さく表示することで、予定の把握が容易になる。また、スケジュールをらせん型に表示することで、繰り返しの多いスケジュールを立体的に把握することが可能になる。 なお、CSDの基本的な操作は、日経ITPro Java技術最前線「一目でわかるProject Looking Glass」第2回が参考になる。また、CSDをデモモードで起動して、地球を周回する衛星をダブルクリックすると、チュートリアル(英語)が表示される。
小出研とCosmo Scheduler D Cosmo Scheduler Dを開発した小出研究室では、主に並列分散環境についての様々な研究を行っている。3D GUIは必ずしも専門ではなかったが、前々から小出 洋先生が3D GUIの構想を持っていたことから、学生3名が卒業研究として3D GUI環境の開発に取り組んでいたという。ところが、そこへサンからLG3Dが発表された。そこで、デスクトップ環境の開発から、アプリケーションの開発へ方針を変更した。
このとき開発したのが、3D GUIによるスケジュール管理ツールCosmo Scheduler Dである。この開発プロジェクトは、IPAによる2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業に「三次元GUIスタイルの提案とその開発環境の整備」として採択された。 未踏ソフトウェア創造事業は、情報処理推進機構(IPA)が行っているIT人材の発掘・育成事業である。数ヶ月という短期間で、オリジナリティあふれるソフトウェアの開発などを支援している。
Duke Choice Awardと
学長賞のトロフィー。 小出研では、難しいコードを書くと、
このトロフィーに捧げて、 手を合わせて拝むという。 『Cosmo Scheduler Dのソースコードは、約2万3000行程度です。これを、未踏事業の8ヶ月ほどで書きました。これは、修士の学生たちが書くコードの量としては、多い方だと思います。当時はLG3Dの情報が少なくて、いろいろテストコードを書いたりして、機能と使い方を調べるところからやりました。これにかなり時間を取られました。』(小出) こうして開発されたCSDは、大きな反響を得た。その最大のものが、サンフランシスコで開催されたJavaの世界的なイベント2005 JavaOne Conferenceで、Duke Choice Awardを受賞したことだろう。さらに、2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業では、プロジェクトの代表者だった薬師寺 浩二さん(九州工業大学大学院情報工学研究科博士前期1年、当時)が、スーパークリエイターとして認定された。また、学長表彰、平成17年度明専会技術賞 最優秀賞も受賞した。 なお、サンでは、2005年12月にEducationプログラムの一環として、Ultra20x10台を寄付している。 ライフログとの組み合わせで、新しい可能性を開く
新しいCSD。デモには、
速いマシンのほうが効果的ということで、 Ultra20を使っている。 CSDの開発は、これだけでは終わらなかった。2005年には、IPAの2005年度下期 未踏ソフトウェア創造事業に「履歴の高度利用のための3次元GUIベースの情報環境の開発」として再び採択されたのだ。これは、CSDと同じく2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業で開発された「ねころがー」という作業記録システムをCSDと組み合わせるプロジェクトだ。 「ねころがー」は、中京大学大学院 情報科学研究科 博士過程の近藤 秀樹さんが開発した、いわゆる「ライフログ」ツールである。「ねころがー」は、コンピュータを使った作業のほとんど全て記録するシステムである。キーボードからの入力や、スクリーンショット・クリップボードの内容などを適切なタイミングで記録していくことで、過去に行った作業を再現しやすくする。 このようなツールは、大量の作業記録を蓄えることから、目的とするデータを検索するのが難しくなる。そこで、3D GUIを備えたCSDと組み合わせることで、検索を容易にすることを狙ったのだ。さらに、過去の記録から未来のスケジュールを立てやすくなるといった効果もあるという。 この新しいCSDの開発により、小出先生と“ねころがー”の開発者である近藤さんも「天才プログラマー/スーパークリエータ」として認定された。
九州工業大学
情報工学部 知能情報工学科 小出 洋准教授 『未踏で一番大変だったことは、この学校の電気なんです。飯塚市は、もともと炭坑の街なんですが、そのせいなのか送電線が1本しか来ていません。だから、停電するとなかなか回復しないんです。少し離れた体育館に落ちても、安全装置が働いてしまいます。 8月ごろだと、夕立とか雷が多いので、けっこう大変なことになるんですが、未踏事業の発表がちょうど8月にありまして・・・。発表の前日にデモの準備をしていたときは、10分に1回くらい瞬停していました。これが大変で、結局ノートPCに入れて自宅で作業しました。でも、それまで作業に使っていたUltra20のSolarisのファイルシステムは、ビクともしませんでした。 現在のところCSDは、実用レベルに達していません。未踏事業ではデモを重視していましたし、スケジューラーとして当然入るべき機能が入っていません。また、動作ももっと軽快にする必要があります。今後は、これらの課題をクリアしていきたいと考えています。』(小出) 現在の研究状況 小出研では、3D GUIのほかに並列分散処理の研究を行っている。特に、ストリーミングデータをターゲットにしているという。研究室には、Mac miniやAMD64 PCによるグリッドマシンを設置している。
『このほかに、九州工業大学の知能情報工学科としても、取り組んでいる教育プログラムがあります。
ICTコース演習室には、
サンのマシンがずらり 文部科学省の先導的ITスペシャリスト育成推進プログラムにも採択されたため、いろいろなPBLがおこなわれていて、前期のシステム開発型プロジェクト演習では、修士の学生が数名の班に分かれて、Webアプリの企画・設計・実装というプロセスを実習しています。後期のリアルPBLのひとつでは、Java最新技術による大規模ソフトウェアを構築する予定です。 同じく文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールプログラムでは、高校生向けに5時間ほどのセミナーを行いました。最初にCSDとその企画書をサンプルとして見せて、それから自分たちで3Dアプリケーションの企画書を書いて、最後にそれをプレゼンしてもらうという内容でした。短い時間だったので、“最初の仕様設計が重要”ということを感じてもらうこと目標としました。
小出研の皆さんとの
ディスカッション。 このとき面白かったプレゼンに、3D家計簿があります。これは、時間軸を家計簿化しようというもので、支出が多くなれば時間軸のハードルが高くなったり、収入のところではお金が落ちているといったアイデアが楽しめました。 LG3Dをはじめとして、3D GUIには、まだまだできることがたくさんあります。学生とディスカッションしていると、面白いアイデアが飛び出すことがあります。それをパクるとかではなく、いっしょに形にしていけたら良いなと思っています。』(小出) 次の10年は、これまでの10年より面白い
天才プログラマー/
スーパークリエイターの認定証 最後に、小出先生に情報技術とその教育について、お考えを伺った。 『これまでの10年と、次の10年で、コンピュータはどっちがすごくなるか。 こんな質問を学生にすると、多くの学生は、もう進歩は止まっていると答えます。でも、明らかに次の10年のほうが、とんでもないことが起こると思います。これまでの10年もすごかったけど、次の10年はもっとすごい。そのことをもっと伝えたいと考えていますし、それを学生に伝えるのが教育者の役割だと思います。 私も、自分でコードを書きたいほうです。動いているプログラムは、どうなっているか全部分かっているし、カワイイですよね。授業だけだと、教える方も書くコードは多くありません。そこで、コードを書く時間を得るために、未踏に応募しました。 プログラミングが好きで、九州方面でプログラムを作りたい人は、ぜひここを目指してください。』(小出) 参考 ※著者のタイトル、所属等は、執筆当時のものであり、現在と異なる場合があります。
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