決してありえない話ではないパンデミック
インフルエンザが流行しています。国立感染症研究所感染情報センターの発表によると、2009年1月下旬現在で約20万人の罹患者が報告されており、約20の都道府県で最も高い警戒レベルである"インフルエンザ警報"が発令されています。そうはいってもしょせんインフルエンザと、たかをくくりがちですが、ウイルスは自らの生き残りをかけて日々進化しています。 例えば今はかろうじて鳥の間にとどまっている鳥インフルエンザがヒトへ感染しやすいよう強度を高めており、それが現実のものになったら、あっという間に感染者は100万単位、1,000万単位に広がると予想されています。恐ろしいことにこのインフルエンザは、老いも若きも関係なく猛威をふるうといいます。 こうした現象の発生が、最近報道でよく目にする"パンデミック"です。歴史的にみると、何度か大きなインフルエンザ・パンデミックが確かに起こっています。例えば1918~1919年にかけて大流行した通称"スペインかぜ"。かぜとはいうものの実はインフルエンザ(A/H1N1亜型)であったようで、世界保健機関(以下、WHO)の発表では死亡者数は全世界で4,000万人に上り、日本でも当時の内務省が約2,300万人の患者と約38万人の死亡者が出たと発表しています。 1957~1958年にはアジアインフルエン(A/H2N2亜型)、1969~1969年には香港インフルエンザ(A/H3N2亜型)が発生しており、それぞれ全世界で200万人、100万人の死亡者が出ました。WHOの「世界インフルエンザ事前対策計画」における警報フェーズがパンデミックアラート期の3で、すぐ次に"ヒト-ヒト感染が増加していることの証拠がある"警戒レベル4が控えていることを考えると、パンデミックはありえない話ではないのです。 対症療法ではなく汎用性の高い事業継続計画立案を
パンデミックが発生したら、私たちはどうふるまうことになるのでしょうか。基本的に、ヒトが集まるところには行けなくなります。公共交通機関を利用してもいけないし、学校へ行くことも会社へ出ることも不可能になるのです。学校なら、ほとぼりがさめるまで学級閉鎖をする方法があります。勉強は多少遅れますが、学生や教員の生命にはかえられません。 しかし、会社の場合は少し事情が異なります。企業活動がまったく停止してしまえば、大きな経済的損害や社会的信用の低下を招いてしまいます。それを防ぐためには、あらかじめそうなったときのことを想定して、対応策を講じておくのが一番です。こう考えてくると、パンデミック対策は地震などの災害対策などと同様の事業継続計画の遂行にほかならないのです。 ここで一つ注意しておきたいのは、"パンデミック対策なのだから、パンデミックに合わせた事業継続計画を立てればいい"あるいは"地震対策で立てた事業継続計画を流用すればいい"と短絡的に考えないことです。企業活動の継続が危ぶまれる事態はいくつか考えられます。地震、竜巻、テロ、パンデミック、停電。せっかく事業継続計画を立てるのであれば、それらのどれに遭遇しても対応可能なように、汎用性のある幅広い視点でプランニングを行うことが重要です。 実際、このような考えに立脚して対策を講じていた企業では、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロ事件の際にも、企業活動の停止という事態に陥らなかったといいます。 重要なのは、人、システムの継続性、そして訓練
では、具体的にどのような観点で事業継続計画を立てればいいのでしょうか。 まずは、社員それぞれが日ごろ行っている職務の定義とその遂行状態を徹底的に洗い出すことでしょう。これは様々な代替案を考えていく上で欠かせないベースになります。次に、「社内ネットワークが機能しない」「社外ネットワークにつながらない」「電話が機能しない」「システムが動作しない」「社員が業務にあたれない」などといった具合に、発生しうる事象を思いつくかぎり上げ、代替方法を探っていきます。大きく、人に関する部分とITやオフィス機器に関する部分があります。 人に関する部分では、代替要員の選定とそれに連なる権限委譲体制の確立が重要です。業務が個人単位、組織単位で遂行できない事態に備え、事前に、誰が誰の業務を引き継ぐのか、どの部門がどの部門の業務を肩代わりするのかを決めておくのです。 権限委譲に際しては、非常時に直面した場合に、「誰が発動し」「誰から」「どのような権限を」「いつからいつまで」「誰に与えるか」といったことを明文化して遂行する必要がありますが、企業内で既にアイデンティティ管理システムが導入されていれば、これをITの仕組みの中でスムーズに行うことができます。 オフィス機器やITで確保する代替方法としては、冗長化が一番自然な方法だといえるでしょう。システムが動かない場合に備えて、別の拠点にバックアップシステムやバックアップデータを用意しておくのは、今やよく知られた方法です。それと同様に、電話、携帯電話、Skype、インスタントメッセージ、電話会議システムなど、コミュニケーション手段も複数備え、AがダウンしたらBというバックアッププランを講じておくことは非常に有効です。 ここでの留意点は、体制を整備しただけで満足せず、策定した計画で実際に訓練を行ってみることです。それも関係者全員が参加する訓練です。どのように完璧な計画が存在しても、そのように動くことができなければまったく意味はないからです。 万が一への備えが結果的にオフィスのコスト削減を実現
"事業継続計画の重要性は理解できるものの、この世界的な経済危機下、いつ起こるかわからない天災のために大きな投資はかけられない"という、お客さまの声を聞くことがあります。しかし、これは誤解です。事業継続計画の立案はまさかのときのためだけの備えではなく、結果的に企業活動を進化させる取り組みといえます。 社員がオフィスに出社しなくても職務遂行できるリモートオフィス環境が整ったとしたら、オフィススペースを減らせるだけでなく、オフィスの立地条件にもしばられなくなります。また、社員の望むワークライフバランスを満たしながらの雇用形態多様化といったことも可能になります。 実際、サン・マイクロシステムズでは、社員の職務遂行形態の柔軟性を高めるSun Open Workという制度を導入したことで、4億ドル以上の不動産費用削減に成功したとともに、2007年だけで6,800万ドルの経費を減少させました。ほかにも、電力費の削減、ハードウェア、ソフトウェアの管理工数削減など、多岐にわたるメリットを享受しています。 新着のホワイトペーパー「新型インフルエンザ・パンデミック対策-効果的な事業継続計画とは」では、インフルエンザ・パンデミック対策を契機に実現する、投資対効果の高いオフィス環境の構築について詳しくご説明しています。ぜひダウンロードしてご一読ください。 次回は、本論を一歩進め、理想的なリモートオフィス環境構築に効く仮想デスクトップ・ソリューションについてご紹介します。
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