論文が世に出てからの年月はあっという間だったような気がします。論文の影響については非常に満足しています。全てのブラウザでSSLが採用され、公開鍵暗号は史上で最も広く導入された暗号手法となっています。
技術面だけでなく、より広範な目的を達成できたことも嬉しく思っています。私は暗号学会(Association for Cryptologic Research)の創設者の一人として同学会を立ち上げました。この学会はいまや会員数が1,000名を超え、年に十数回ものカンファレンスを開催しています。
私が目指してきたことの1つに、政府機関と民間双方の情報保護手法の統一があります。10億ドルの送金の保護より機密文書の保護を重視するなどというのはばかげていると、かねがね思っていたのです。しかし遂に、その統一が実現されることになりました。昨年、米国国家安全保障局(National Security Agency)はあらゆるレベルの機密情報を保護するために認定された新しい暗号化アルゴリズムを発表しました。これらのアルゴリズムは全て公開されており、大半は公開標準規格です。これは『Suite B』と呼ばれています。(Suite Aは「Juniper」や「Mayfly」など多彩な名称が付けられた秘密アルゴリズムをまとめたものです。)
Suite Bの中核となるのが、Advanced Encryption Standardです。これはベルギーで開発された暗号化アルゴリズムであり、米国では国際的なコンテストを経て国家の標準規格に選定されました。また、Suite Bの主要な管理部分を成すのは、次世代公開鍵暗号です。これは『楕円曲線暗号』(elliptic curve cryptography、ECC)と呼ばれています。 |