大きな違いは、成長の速度です。すでに確立した市場では、大学生がまず企業のテクノロジーを学習してから商用アプリケーションを開発し、そのアプリケーションを企業が購入する、ということがよくあります。また、既存市場の企業は、旧来受け継がれてきた様々な種類のITアーキテクチャや異なるスキル・ベース、プロセス、手順というものを抱えています。
一方新興市場では、360度の視野を持つことが重要です。企業のテクノロジーは、あらゆる経済分野の開発者や大学レベルで利用可能なものであることが不可欠です。
開発者や学生がそれらのテクノロジーを利用して、世界中のユーザへのアクセスを可能にするスキル、アプリケーション、ビジネス・モデルを確立できるようにしなければなりません。政府機関も、既存市場との違いがある分野です。新興市場の政府機関はきわめてオープンで柔軟な考え方を持っており、新しいテクノロジーやアーキテクチャが登場すると、それまでとは異なる選択をすることも厭いません。
例えば、通信市場を見てみましょう。米国や英国などの既存市場では、50年以上前から固定電話回線が敷設されています。しかし多くの新興市場では、一刻も早く成長する必要性に迫られているため、ワイヤレス、携帯機器、インターネット・デバイスなど、より新しいテクノロジーに一気に進んでいくでしょう。新興市場でそれが可能なのは、既存市場ほどの規模で旧来のインフラに制約されることがないからです。ここで、モバイル・ユーザの動向に関する統計値を少し見てみましょう。
現在、携帯電話ユーザは世界全体で22億人です。そのうちブロードバンド携帯電話のユーザは現在42%ですが、2012年までには70%になると予測されています。「固定」電話用インフラがほとんどない開発途上諸国では、携帯電話ユーザがこの10年間で4倍に増加しています(リープフロッグ効果)。このような成長は、中国やメキシコなどの市場がもたらすものです。
中国では、携帯電話ユーザは全人口のわずか42%であり、メキシコでは53.5%です。インドは最も成長著しい市場であり、携帯電話販売台数は毎月約600万台増加しています。同国の携帯電話販売台数は2億7,270万台に上っているにもかかわらず、市場浸透度はわずか24.1%にすぎません。インドでは、2010年末までに携帯電話加入者数が5億人に達するものと予想されています。
これらの市場とのビジネスにあたっては、オープンな考え方が大切であり、これらの市場を既存市場の基準で分類するのではなく、これらの市場が現在どのような状況にあるのかを理解しようと努めることが重要です。