ジョナサン・シュワルツによるProject Blackboxのご紹介
いずれも簡単に解決できる問題ではありません。特に1台のコンピュータで一度に解決することは無理です。しかし、こうした状況は、世界では皆さんが思っている以上によくあるのです。さて、ここまでのお話で、「完璧なデータセンターとはどういうものか」という問いかけをする理由がおわかりいただけたでしょうか。 完璧なデータセンターを作り上げようとするならば、従来のデータセンターを改善し、スペースと電力の効率を向上させなくてはなりません。また、非常に高い性能を持たせること、贅沢なオフィスを持つ人間のためではなくマシンのための設計とすること、そして、これを年単位ではなく週単位の短期間内に利用できるようにすることが必要です。さらに、災害地域であれ、水力発電施設のすぐ隣であれ、ユーザがどこにでも配備できるように移動可能でなければなりません。 しかし、ここではもっとも基本的な質問から始めることにしましょう。その規模はどれくらいになるでしょうか。 垂直方向に拡張される対称型マルチプロセシング・システムでは、複数のCPU群が共通のメモリ・セットへのアクセスを共有します。しかし、システムの規模には、物理的および論理的な制約があります。ネットワーク内部の多種多様な要素すべてを接続するプライベート・ネットワーク以上の規模は実現できません。 しかし、Webの将来は、明らかに水平方向へ、つまりグリッド・コンピューティングへと向かっています。グリッド内では、小規模な*汎用の要素(サンのNiagaraやGalaxyシステムなど)の集合体が従来型のネットワークで接続されます。そして、「最大のグリッドとはどのくらいの規模か」という質問には明確な答えはありません。グリッドは好きなだけ拡張することができるのです。汎用の構成要素を用いて世界最大のスーパーコンピュータを構築しているTACCがそのよい例です。 少し前に、数人の有能なシステム・エンジニアに簡単な質問をしてみました。「水平方向に拡張するシステムに最適な規模というものはありますか」。面白いことに、返ってきたのはSolarisのスケジューラや博士論文に基づく答えではありませんでした。その答えの根拠は、第2段落で私が挙げたような、お客様が直面している環境の実態にあったのです。さらに興味深いことは、そこで引き合いに出されたのが造船所だったということです。 なぜ「造船所」なのか。
まず、サーバをラックに載せ、前面から背面に向けてファンの送風で冷却するのはなぜでしょうか。システムを取り扱う人間にとっての便利さを考えてのことです。ところが、「定位置のない」データセンターを運用するのであれば、人間の介入はほとんど不要になります。そこで私たちはラックの思考の向きを90度変え、複数のラック全体に行きわたるきわめて効率的なエアフローを作り出しました。空気だけでなく、一部を水で冷却するというのはどうでしょう。手をやけどしたとき、皆さんは空気の中で手を振りますか、それとも氷水を入れた洗面器に手を浸しますか?水で冷やす方が、ずっと効果的です。 一般的なデータセンターでは、運営コストのかなりの部分が、気まぐれに配置された高熱のコンピューティング・プラットフォームを冷却する電力に費やされています。通風の向きを変え、水冷装置を増やせば、冷却コストはたちまち削減でき、環境への影響も軽減できます。エコ・レスポンシブルの「エコ」が、経済を意味することについてはお話ししたでしょうか。電力コストは、多くの企業のデータセンター運営コストの中で、人件費に次ぐ第2位を占めています。(そう、電力コストはそれほどまでに大きいのです)。 私たちが電力効率を追求するようになったのも、このためです。 第2に、電力会社に支払う料金よりも低コストで発電できるのであれば、そうするのがよいでしょう。コンテナ内に発電機と冷却装置を並べて、ほぼ無制限で安価な電力を調達すればよいのです。(なんなら、バイオディーゼル燃料で発電するのもよいでしょう)。 電力料金やワークロードの要件が変化して、コンテナを移動させたくなったら、ありがたいことに世界の輸送インフラストラクチャが自由に利用できます。列車、トラック、船、ヘビーリフト・ヘリコプターなどです。コンテナは沖合の油田採掘装置に設置することもできます。あるいは、災害地域や、インフラストラクチャの整備されていない僻地にも。もっとも必要とされる場所、どこにでも設置できるのです。 最後になりますが、私が訪れたデータセンターのほとんどでは、コンピュータよりも、何も置かれていない床タイルのほうが目につきました。なぜでしょうか。データセンターがコンピュータで埋め尽くされるより先に、オペレータによって使用可能な電力が消費し尽くされてしまうためです。広大で高価な不動産が、閑散としたラック置き場として無駄遣いされているのです。コンテナは、これとは正反対です。大量の電力と冷却装置を使用して、システムを何倍もの密度に集約させて空間を節約します。しかも、地下室でも駐車場でも屋上でも、場所を選ばず運用が可能です。それは、人間ではなく、ユーティリティが配置される場所だからです。 私たちは、過去に達成してきた進歩を土台に、自らが今後進むべき方向を探るべく、お客様と十分なコミュニケーションを重ねてきました。それをもとに、試作品を発表し、その方向性を明らかにしました。細部を詰める作業を終えた私たちは、さらにコンテナのセキュリティ・システムを企業のセキュリティ・システムとして統合する作業に取り組んでいます。コンテナのシステムは、GPSを介して現在位置を判断します(必要ならGoogle Mapで位置を特定できます)。コンテナが開いていたり、動いているときには、センサーが働きます。輸送中の危険に対処するため、基本的な落下テストも実施しました(もっとも、アクシデントによるものですが)。内部のラックは重力加速度8Gの衝撃にも耐えられます。カムフラージュ・オプションも検討しています(お客様のユニットに「どうぞ盗んでください、RAMが満載です」と言わんばかりにサンの大きなロゴをつけるのはいかがなものでしょうか)。
私たちは、総合的なレベルで、すべての釘を打てる金づちのような万能の策はないことを心得ています。 しかし、すべてのネットワーク・コンピューティングに合うProject Blackboxならあるかもしれません。 仕様や詳細はこれからになりますが、ひとまずは、すばらしい写真と使用例のシナリオをご紹介しておきましょう(私のお気に入りは、火星探査機のシナリオです-これはGregのアイデアなんです)。
ジョナサン・シュワルツ |
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