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ソナック株式会社

概要

さらなる大規模化、高機能化を続けるLSIの設計開発において、それに要する全時間のうちの70%以上が論理的な検証作業に割かれているという。こうした状況を見据えてソナック株式会社は、業界でいち早く新しい検証手法を用いた「LSI検証サービス」の提供を開始。その裏づけとなる独自に培ってきた開発効率向上のノウハウと技術力を実証するため、現在手がけているアレイ・プロセッサの開発に対応した検証環境を構築した。

このシステムは、Solaris 10 OS on x86を搭載したSun Java Workstation W2100zならびに3台のSun Fire V40zをギガビット・イーサネットで接続するとともに、Sun N1 Grid Engineを用いてグリッド化して連携させるというもの。LSI検証・設計用言語「SystemVerilog」ならびに検証メソドロジ「VMM(Verification Methodology Manual)」をベースとして構築したテストベンチ上で生成されたランダムなテストケースが、Sun N1 Grid Engineによって3台のSun Fire V40zの合計12個のCPU上で独立して動作するシノプシス社の論理シミュレータ「VCS」に自動的に振り分ける。

CPUの数に応じてリニアなスケーラビリティを得られるこのグリッド環境ならびに個々のCPUのパフォーマンス向上により、従来の1CPUの環境では17時間弱を要していたシミュレーションを、わずか30分強へ短縮することができた。ソナックは、この成果をみずからのLSI検証サービスに生かすとともに、将来的にはサンとのアライアンスのもと、パッケージ化されたLSI検証ソリューションとしてデジタル機器メーカーや半導体メーカーなどに提供していく構想も持っている。

主な課題
得られた結果
  • LSI検証におけるシミュレーションのスピードアップ
  • IT基盤の拡張性と信頼性を確保
  • シミュレーション時間を17時間弱から30分強へ大幅短縮
  • LSI設計/検証作業における「SystemVerilog」ならびに検証メソドロジ「VMM」を用いた新手法の有効性を実証
  • CPU個数に応じたリニアなパフォーマンス拡張
  • パッケージ・ビジネス参入への足がかりを獲得

デジタル家電や携帯電話、デジカメ、カーナビなど、さまざまな電子機器を構成するLSI。複数の回路を1つのチップ上に集約することで、それらの機器における機能の高度化や小型化を支えてきた。しかしながら、LSIに組み込む回路が大規模化・複雑化すればするほど、それが意図どおりに動作するかどうかという論理的な検証は困難を増していく。

LSIに集積された素子の点数が増えるに従い、その組み合わせの数は爆発的に膨らんでいき、無数のパターンのテストならびに不具合の修正を実施しなければならない。昨今、LSIを設計開発する全体の時間のうち70%以上がこの検証作業に割かれているという。

LSIメーカーにとって、こうした検証作業の負担は重くのしかかっており、次第にみずからの手に負えないような状況になってきている。そのため、この作業を外部の専門家に委託するということが求められているのである。

こうした時代のニーズに応え、いち早く新しい検証手法を用いた「LSI検証サービス」に参入したのがソナックだ。同社は、ニッタグループのエレクトロニクス分野から独立したベンチャー企業であり、長年にわたるLSI事業を通じて培ってきた開発効率向上の独自ノウハウを、より広範なLSIメーカーに向けて提供していくことを目指している。

松岡 正 氏
ソナック株式会社
LSI事業部
部長
松岡 正 氏
榊原 泰徳 氏
ソナック株式会社
LSI事業部
アーキテクト
榊原 泰徳 氏

同社がアドバンテージを誇っているものの1つが、LSI検証・設計用言語の「SystemVerilog」および検証メソドロジ「VMM」の適用ノウハウである。その具体的な強みについて、ソナック LSI事業部 部長の松岡 正氏は、次のように語る。

「従来のように、無数のテスト・パターンを手作業でしらみつぶしに行っていたのでは、検証作業はいつまでたっても終わりません。そこで、この作業を自動化しようという目的から、新たに規格化されたのがSystemVerilogおよびVMMなのです。ただ、これらの言語やメソドロジを使いこなすためには、一般のハードウェア技術者が身につけていないようなソフトウェアやシステムの分野のスキルや経験が要求されます。まさにそのノウハウをソナックが提供しています」

そして同社は、それによって実際にLSIの検証作業が大幅に効率化されることを定量的に示すため、2007年1月にSystemVerilogならびにVMMをベースとしたシノプシスの論理シミュレータ「VCS」をベースとした検証環境を構築した。

検証環境概要

ここでいう検証とは、乱数を使ってさまざまなテスト命令のパターンを自動的に生成して実行し、その結果が論理的に正しいか、間違っているのかを自動的にチェックするという方法をとる。したがって、ある一定の時間内でどれだけ多くのシミュレーションを実行できるかが検証作業の最大のカギとなる。

そうした中で同社が採用したのが、Sun Java Workstation W2100zならびに3台のSun Fire V40zをギガビット・イーサネットで接続するとともに、Sun N1 Grid Engineを用いてグリッド化して連携させたシステムである。この基盤における処理の概要を、ソナック LSI事業部アーキテクトの榊原泰徳氏は、次のように語る。

「3台のSun Fire V40zが持っている合計12個のCPU上で、それぞれ独立してVCSを稼動させます。それらに対して、独自に開発したテストベンチからランダムに生成される最大7168万命令を含む、異なる100シードのテストケースを、キュー投入サーバ(Sun Java Workstation W2100z)から次々に振り分けながら実行していくのです」

当初、同社はこのシミュレーションを1本のVCS、すなわち1CPUのコンピューティング環境で実行しており、17時間弱の時間を要していた。そのシミュレーションをSun N1 Grid Engineを用いたグリッド環境に移行したことで、同社は全く同じ数のテスト命令を30分強で完了するという驚異的なスピード・アップを実現した。

VCS(SystemVerilog)&グリッド環境

榊原氏は「もちろん、旧プラットフォーム環境と比べて個々のCPUのパフォーマンスが向上している点も見逃せません。しかし、その効果もさることながら、やはり根本的なところで効いたのは、CPUの個数に応じてリニアに拡張するパフォーマンスを活用できたことです。その意味でも、サンのハードウェアおよびSolaris 10 OS on x86、Sun N1 Grid Engineで構成されたプラットフォームが大きな貢献を果たしています」と評価する。

実際、こうしたシミュレーションのスピード・アップは、LSIの検証作業の効率化において大きな成果をもたらしている。

「従来のシミュレーション環境では、エンジニアは夜退社する前にジョブを投入しておき、翌日その結果を受け取ってデバッグするというサイクルで検証を行っていました。しかし、仮にそのジョブに何らかのミスがあった場合、丸一日分の戻りが発生してしまうなど、とても非効率的な状態にあったのです。それが、今回のシミュレーションの時間短縮により、エンジニアがデバッグを終えたころに次の結果が返ってくるという、効率の良い検証サイクルを実現することができました」と松岡氏は手ごたえを語る。

話は前後するが、同社が今回Sun N1 Grid Engineを用いたグリッド環境を構築し、LSIの検証作業に活用しようという考えに至ったことには「Solaris 10 OS on x86版VCSが新たにリリースされた」という背景がある。

もともとVCSが対応していたLinuxをベースに、同様の機能を持ったグリッド環境を構築することも不可能ではない。しかし、同社はその導入には踏み切れなかった。

「Linuxはカーネルをはじめ、ソースコードがどんどんバージョンアップされ、機能強化されていきます。それが大きなメリットであることは間違いありませんが、一方で何かトラブルが発生した場合、ソースコードを自分たちで追いかけて問題を解決しなければならないなど、大きなリスクも抱えています。LSI検証・設計という信頼性が問われる長期的な業務のプラットフォームに適用すべきかというと、やはり無理だというのが私達の判断です。信頼性に関してメーカーからの保証があり、仮にトラブルがあった場合でもきちんとしたサポートを提供してくれるOSでなくてはなりません。そうした理由から、私達はVCSがSolaris OSに対応するのを待っていました」と榊原氏は語る。

そして、その信頼性がみずからの業務で実証されたことで、同社は今回構築したグリッド環境をベースとした新たなビジネスの展開も視野に入れている。

松岡氏は「さまざまなLSI検証サービスへの適用はもちろん、将来的にはサンとのアライアンスのもと、パッケージ化されたLSI検証ソリューションとして、デジタル機器メーカーや半導体メーカーなどへ幅広く提供していけたらと考えています」と語る。

さらに大きく拡大しようとするLSI開発のマーケットにおいて、ソナックは新たな、そして大きな一歩を踏み出したのである。

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