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東京大学 宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設

概要

東京大学 宇宙線研究所の神岡宇宙素粒子研究施設には、大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測施設(スーパーカミオカンデ)がある。ニュートリノに質量があることを発見したことで名高い施設だが、その解析システムの端末装置として、2007年3月にシンクライアント端末であるSun Ray Virtual Display Clients(以下、Sun Ray)が導入された。Sun Rayは東京大学 宇宙線研究所の本部がある柏キャンパス、神岡宇宙素粒子研究施設、そして坑内のスーパーカミオカンデ実験サイトの3か所で、それまであった40台のPCに代わり、70台のSun Rayが配置されている。

PC環境からSun Rayに代わったことで得られたメリットは、解析ツールのグラフィックス表示が速くなり、ストレスから開放されたことと、ファンがないため静かで研究に没頭できる環境を提供していること、そして3か所のサイトのどこにいてもICカードを差し込めば、いつものデスクトップ環境で同じように作業ができることだ。Sun Rayに加え、2007年3月に稼動開始したこの新しいシステムには、Sun RayサーバとしてSun Fire V240が6台設置されている。

Sun Ray Connector for Windowsにより、Microsoft Windows Terminal Serviceへ接続されているため、事務作業などではSun RayからMicrosoft Windowsアプリケーションを利用できる。これら一連のシステムはSun Rayサーバ1台がスーパーカミオカンデ実験サイトに設置されている以外は、すべて神岡宇宙素粒子研究施設のサーバ・ルームに置かれている。柏キャンパスのSun Rayは、広域ネットワーク越しに、直接、神岡研究施設のサーバにアクセスしている。神岡宇宙素粒子研究施設にサーバを集約させているのは、観測や研究の現場にメインのシステムを置いておくことが重要と考えているためである。

主な課題
得られた結果
  • 各研究施設のクライアント環境の利便性を上げたい
  • WAN越えでもシンクライアントを使用したい
  • グラフィックスの表示スピードを改善したい
  • どの施設からでも作業を中断することなく利用できる
  • 柏キャンパスでのシステム管理コスト削減
  • Microsoft Windowsのアプリケーションも問題なく使えた
  • WAN越えの利用でも高速なグラフィックス表示を実現
  • 研究室が静かになり、研究に没頭できる

岐阜県と富山県の県境に近い、岐阜県飛騨市神岡町に「東京大学 宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設」がある。長い名称だが、一般的には実験装置の通称である「スーパーカミオカンデ」という方が知名度はあるだろう。

スーパーカミオカンデは、宇宙から飛来するニュートリノを観測するために作られた地下実験装置。世界最大の規模となる約5万トンの純水を蓄えている。そのスーパーカミオカンデは、神岡鉱山茂住坑内に1991年に着工、1996年から観測活動を開始した。それ以前は体積3000トンの「カミオカンデ」があり、その功績によって、2002年に東京大学特別栄誉教授の小柴昌俊氏がノーベル物理学賞を受賞したことは、記憶に新しい。

神岡宇宙素粒子研究施設が世界的な注目を集めたきっかけは、ニュートリノに質量があることを観測結果から示したところにある。そのインパクトの大きさは、1998年6月5日付のThe New York Timesの1面を「ニュートリノに質量があることを発見」とするニュースが飾ったことからもうかがい知れる。

竹内 康雄 氏
東京大学
宇宙線研究所附属
神岡宇宙素粒子研究施設 准教授
博士(理学)
竹内 康雄 氏

「それまでニュートリノは質量がない、ということが常識とされてきました。これは素粒子物理学の常識を覆し、新しい方向を生み出す画期的な発見でした」と東京大学 宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設 准教授の竹内康雄氏が語るほど、物理学の世界に与えたインパクトは大きかった。その観測結果は、次のようなものであった。

スーパーカミオカンデでとらえた、陽子などの宇宙線が大気と衝突して発生する大気ニュートリノの観測結果から、ニュートリノが振動していることを発見。この振動は、ニュートリノに質量があることの証拠であった。

このような観測活動を行う神岡宇宙素粒子研究施設にとって、一瞬のシステム停止さえも致命的となりかねない。「カミオカンデで超新星爆発をとらえたのが20年前。次にいつ観測できるか分からないだけに、システム停止はあってはならないのです」と竹内氏。超新星爆発によるニュートリノを観測できるのはわずか10秒ほど。その10秒を逃すと、次の機会までは、また数十年待つことになるかもしれない。

神岡宇宙素粒子研究施設では、2007年3月からSun Rayが活用されている。
シンクライアントの導入検討にあたり、他のPCやシンクライアントも比較したが、端末からアプリケーションを実行したまま、ICカードでセッション移動ができる点がSun Rayを採用した大きなポイントの1つであった。それには、神岡宇宙素粒子研究施設ならではの背景がある。

東京大学 宇宙線研究所の本拠地は、千葉県の柏キャンパスにある。そして神岡町にある研究施設と、そこから4キロメートル離れた地点にある坑内のスーパーカミオカンデ実験サイト。研究者はこの3か所を頻繁に行き来するというわけだ。

「どこの施設に行っても、ICカードを差し込めばそれまで行っていた作業の続きが行えます。神岡で実行開始した解析ツールの完了を待たずして、柏キャンパスに移動し、引き続き作業ができるという点で、非常に利便性を感じています。それまでは、実行した解析ツールを中断してしまうか、結果が出るのを待たなければなりませんでしたから」と竹内氏は語る。

以前はクライアント環境としてPCを使っていたが、そのすべてを撤去し、70台のSun Rayを導入した。それまで使っていたMicrosoft Windowsアプリケーションについては、Sun Ray Connector for WindowsによるMicrosoft Windows Terminal Serviceへの接続により、Sun RayからもPCと同様に利用することができる。

クライアント環境を大きく変えるのには不安がつきまとうものだが、結果的には利用者全員に好評で、特に静音性に対する評価は高く「PCのころはファンがうるさいと言われることがありましたが、Sun Rayの導入後は、エアコンがうるさいと言われるようになりました(笑)」(竹内氏)

2007年3月に稼動開始したこの新しいシステムには、Sun RayサーバとしてSun Fire V240が6台設置されている。そのうち5台は神岡宇宙素粒子研究施設にあり、1台はスーパーカミオカンデ実験サイトに置かれている。サーバを柏キャンパスではなく、神岡宇宙素粒子研究施設に置いたことについて竹内氏は「研究に使用する設備は、現場に置くのが原則ですから」と説明する。

研究活動では観測した結果を解析することになるが、そのための解析ツールは独自にプログラミングしたものを使っている。そのためには、ツールの開発や実行の環境となるサーバも現場に置いた方がよいというのがその理由だ。

柏キャンパスにあるSun Rayは、国立情報学研究所のSINET3(Science Information Network)経由で250キロメートルほど離れた神岡宇宙素粒子研究施設と1Gbpsで接続されており、広域ネットワーク越しに直接、神岡宇宙素粒子研究施設のサーバにアクセスしている。柏キャンパスからの利用においてもSun Rayは好評で、増設の要望があり、急遽、神岡宇宙素粒子研究施設から持っていったり、追加購入をしたりしている。

柏キャンパスにサーバが設置されていないこと、クライアントのメンテナンスがほとんど不要になったことから、柏キャンパスでのシステム管理コストも大幅に削減されている。

Sun Ray上で解析ツールを使用した感想として、竹内氏は「事前にデモ機を借りて試したときに、重いグラフィックが、柏キャンパス内でこれまでのPC環境に比べて速く表示できることが分かりました。実際に導入した後も、神岡と柏で同等の端末環境で解析が快適に行えます」と評価しており、そのため研究面での効率化にも貢献している。また、すべてのPCを撤去したことで、神岡宇宙素粒子研究施設の事務部門でもSun Rayが使用されている。

そして、今後の課題の1つは海外の研究機関との連携である。素粒子物理学では、その研究内容の先進性ゆえ、海外の研究機関との共同プロジェクトが多いという。「将来的な希望ですが、Sun Rayを持つ海外共同研究機関から、VPN(仮想専用線)を経由して、データ解析のためにアクセスできるようにしたいと思っています」と竹内氏は語る。

スーパーカミオカンデではさまざまな観測が行われているが、どれもいつ発生するか分からない事象を確実に観測データとして記録するという、気の遠くなるような時間と努力が必要とされる。スーパーカミオカンデに対する期待は高く、その研究をIT環境の面で支えるべく、Sunは今後も最適なソリューションを提供していく。

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