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大日本印刷株式会社

概要

大日本印刷株式会社(DNP)は、半導体の製造に欠かせないフォトマスクで世界トップクラスのシェアを持つ。その事業を担う電子デバイス事業部が長年にわたって取り組んできているのが、顧客となる半導体メーカーから預かったフォトマスクの原版データの管理である。この課題に対処するために、DNPは2004年にSun StorageTek QFSならびにSun StorageTek SAM-FS、メタデータ・サーバとしてSun Fire V880を導入し、利用頻度に応じてデータを高性能なキャッシュ・ディスク(1次ストレージ)から大容量のテープ・ライブラリ装置(2次ストレージ)へと移動させるアーカイブ・システムを構築した。

さらに、2006年には30TBの大容量を持つSun StorEdge 6920ストレージを導入し、キャッシュ・ディスクのさらなるパフォーマンスの向上を図った。その一方で進めてきたのが、システムの可用性の向上とBC(Business Continuity:ビジネス継続性)の強化である。DNPは、関西の工場をセカンダリ・サイトとしてディザスタ・リカバリのための仕組みを構築。プライマリサイトから直線距離にして300kmを超える遠方のセカンダリサイトへ、アーカイブ・データを転送することで、大規模災害や重大なトラブルの発生時にも事業を継続できる体制を整えた。

主な課題
得られた結果
  • 膨大な容量となるフォトマスク・データの管理と最適な利用環境の構築
  • 止めることの許されない製造ラインの可用性確保
  • 大規模災害に対する対応
  • 利用頻度の下がったデータ、キャッシュディスクストレージを圧迫する大きなサイズのファイルの的確なアーカイブ
  • 膨大なフォトマスク・データの管理が容易になった
  • キャッシュ・データとアーカイブ・データのシームレスな利用環境を構築できた
  • 大規模災害が発生した際にも、フォトマスク製造を継続できる体制が整った

ハードディスク用サスペンションからICタグ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、受動素子、内蔵配線基板などのエレクトロニクス製品を手がける大日本印刷株式会社(DNP)の電子デバイス事業部は、半導体製造に欠かせないフォトマスクの分野で業界最先端の技術を誇るとともに、世界トップシェアのベンダーとして、その地位を確固たるものにしている。

フォトマスクとは、シリコンウェハに回路図を焼き込む際に使用する、印刷でいうところの「刷版」に相当するものである。すなわち、DNPは半導体メーカーから「版下」に相当する原版データを受け取り、そこからフォトマスクを起こすわけだ。

しかしながら、プロセッサやメモリ、システムLSIといった半導体製品の製造プロセスの微細化・高密度化の進展とともに、フォトマスク製造で扱われるデータ量は爆発的に増大している。大日本印刷 電子デバイス事業部 製造第1本部 IT設計部 エキスパートの奈良秀之氏は、そうした状況を次のように説明する。

「今日の半導体は、数多くのレイヤが折り重なる形で製造されており、高機能なものでは40から50枚のフォトマスクを1セットとして、1つの製品が作られます。フォトマスク1枚あたりのデータ容量が数百ギガバイト、トータルではテラバイト級に膨らんでいくのです」

さらに、フォトマスク製造における「露光」「現像/エッチング」「検査」といった様々な工程でも、大量のデータが生成されていくことになる。

また、これらの大規模な原版データや製造データは、フォトマスクが完成すれば消去できるというわけではない。顧客から長期間の保存の要望があったり、たとえ長期保存の要望がなくても、不意にデータが必要とされるケースがあるため、必要なときに即座に引き出せなくてはならないなど、その管理は複雑なのだ。

大日本印刷 電子デバイス事業部 製造第1本部 IT設計部 高倉奨氏は、「こうした大規模なデータのハンドリングと厳重な管理を行うために、私達は数年前からアーカイブ・システムの整備に取り組んできました。特に大きな節目となったのが2004年8月のことで、Sun StorageTek QFSならびにSun StorageTek SAM-FSの両ソフトウェア、メタデータ・サーバとしてSun Fire V880を導入し、現在のアーカイブ・システムの基盤が固まりました」と語る。

Sun StorageTek QFSソフトウェアは、SAN(Storage Area Network)基盤に高度なパフォーマンスとスケーラビリティを提供し、効率的な運用を促進するファイル共有システム。一方のSun StorageTek SAM-FSソフトウェアは、あらかじめ設定されたポリシーに従い、使用頻度が高いファイルを応答性の高いストレージ・デバイスへ、使用頻度が低いファイルを大容量で安価なストレージ・デバイスへと複製・移動するデータ階層管理ソリューションである。

DNPでは、この2つのソフトウェアを組み合わせることにより、利用頻度の下がったフォトマスクの原版データや製造データを、キャッシュ・ディスク(1次ストレージ)から大容量テープ・ライブラリ(2次ストレージ)へと自動的に移動させる仕組みを作り上げた。

奈良秀之 氏
大日本印刷株式会社
電子デバイス事業部
製造第1本部 IT設計部
エキスパート
奈良 秀之 氏
高倉 奨 氏
大日本印刷株式会社
電子デバイス事業部
製造第1本部 IT設計部
高倉 奨 氏
高橋 章 氏
大日本印刷株式会社
電子デバイス事業部
製造第1本部 IT設計部
高橋 章 氏

奈良氏は、「EDA(Electronic Design Automation)分野における豊富な実績と、安定したシステム運用に不可欠なSolaris OSの高い信頼性を評価し、サンのアーカイブ・ソリューションを選択しました」と採用の理由を語るとともに、導入メリットについては次のように実感しているという。

「データがキャッシュ・ディスクからテープ・ライブラリに移動した場合でも、ユーザは自分が必要としているデータがどちらに存在するのかを全く意識せずに、透過的にアクセスすることができますし、アクセス性能にも満足しています。かつて、紙の台帳に書かれた記録を頼りに保管庫から手作業でテープを探し出していたことを思い出すと、格段のスピード・アップであり、ユーザにとっての利便性向上へとつながっています」

データのアーカイブと関東と関西でのデータ・レプリケーションのイメージ図
データのアーカイブと関東と関西でのデータ・レプリケーションのイメージ図

そして2006年7月、DNPのアーカイブ・システムはさらなる進化を遂げた。キャッシュ・ディスクに30TBの大容量を持つSun StorEdge 6920を導入し、大幅なパフォーマンスの増強を図ったのである。

大日本印刷 電子デバイス事業部 製造第1本部 IT設計部の高橋章氏は、その効果を次のように評価している。

「感覚的には、パフォーマンスは従来の2~3倍に向上しました。例えば、これまで10時間以上を要することもあったフォトマスクの製造データの検証が3時間程度に短縮され、作業効率が大きく改善されています」

アーカイブ・システムにおけるもう1つの大きな拡張が、ディザスタ・リカバリへの対応である。DNPは、これまでのアーカイブ・システムを構築してきた関東の拠点に加え、フォトマスクを製造していて、なおかつ地理的にも離れた場所にある関西の工場にメタデータ・サーバ(Sun Fire V880)、キャッシュディスク(Sun StorEdge 6120)、ならびにテープ・ライブラリ装置を導入。

奈良氏は、そのねらいを次のように語る。

「半導体の需要は順調に伸びているため、これに対応するべく、フォトマスク工場は24時間365日体制でフル稼動を続けています。そのため、万が一大規模災害や重大なトラブルが発生した際でも、システムを長期間にわたって止めるわけにはいきません。また、関西方面でも多くのフォトマスクを受注しているため、できるだけお客様に近い工場で原版データを受け取った方が効率的です。このように今回のセカンダリ・サイトの構築には、BC(Business Continuity:ビジネス継続性)やデータ保護の強化など、多くの目的を兼ねていました」

ただ、こうしたディザスタ・リカバリの実現には、関東と関西という直線距離にして300kmを超える長距離をまたいだ2つのサイト間でのデータ・レプリケーションが必須となる。その仕組みの構築には、さぞかし多くの苦労が伴ったに違いないと思われるところだが、意外なほどあっさりと作業は完了したようだ。

高倉氏は、「もともとSun StorageTek SAM-FSはディザスタ・リカバリの機能を備えており、新たなソリューションを追加導入する必要が全くありませんでした。むしろ、現在のリモート・サイトを含めたシステム形態によってこそ、Sun StorageTek SAM-FSによるアーカイブの真価が発揮されると言えます」と、その理由を語る。

1次データ格納用のSun StorEdge 6920(写真右)を始めとするサンのサーバ群
1次データ格納用のSun StorEdge 6920(写真右)を始めとするサンのサーバ群

フォトマスクの製造に関する半導体メーカーからの要求は、常に高くなり続けている。例えば、グローバルの激しい競争、製品ライフサイクルの短縮などにより、DNPに対するさらなる品質向上やリード・タイムの短縮が求められているという。そのため、アーカイブ・システムも将来に向けて一層の拡張を図っていかなければならない。

今後について高倉氏は、「データをいかに素早くハンドリングできるかがポイントであり、そのためにも2次ストレージの高速化を図りたいと考えています。現在はテープ・ライブラリ装置を使用しているわけですが、これをコスト・パフォーマンスに優れた大容量のSATAハードディスクなどに置き換えていくことも検討しなければなりません」と構想を語ってくれた。

加えて、高倉氏は「システム全体としての、さらなる可用性の向上やBCの強化も重要なテーマです。そのためにもメタデータ・サーバの冗長構成によるHA(High Availability:高可用性)化や、セカンダリ・サイトにおけるストレージ容量の拡張など、できるかぎり早期に取り組んでいく必要があります。その他にも顧客の原版データをより厳重に保護するため、セキュリティも今まで以上に強化していかなければなりません」と考えている。

留まることなく成長し続け、変化も激しい半導体産業を支えるDNPの電子デバイス事業部。積極的なIT投資が、今後も半導体産業に大きく貢献してくことになりそうだ。

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