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津田塾大学

概要

東京都郊外の小平市にキャンパスを構える津田塾大学。正門を入るとすぐに津田塾大学のシンボルであり、東京都選定歴史的建造物に指定されている本館「ハーツホン・ホール」がある。キャンパス内には大木が枝を広げ静かな佇まいをみせており、勉学や研究の場として最高の環境に恵まれている。津田塾大学は、津田梅子が米国留学から帰国後、1900年(明治33年)に開学した「女子英学塾」がルーツ。学制改革にともない1948年(昭和23年)に「津田塾大学」となった。近年ではITの発展に伴い、情報科学・数学などの理系分野にも力点を置く。

その津田塾大学が、英語教育をさらに充実するために取り入れたのが、e-Learningシステムである。採用したのは、サンのサーバ、ブイキューブのビジュアル・コミュニケーション・システム「nice to meet you」、キヤノンITソリューションズのネットワーク対応入出力機器を組み合わせたe-Learningソリューション。このソリューションを現在活用しているのは、「情報科学英語」という科目である。講義は米国人教員により全て英語で行われているうえに、情報分野の専門用語などが多数出てくる。それだけに、1回の講義を聴いただけでは理解が進まなかったり、聞き逃したりする場合があるため、学生の復習環境としてe-Learningシステムが必要だと検討されていた。

2008年度からの本稼動とまだ実施期間の浅いe-Learningシステムではあるが、前期が終了するころには半数以上の受講生が復習に利用しているなど既に十分に浸透していることから、講義内容の理解がより深まるのではとその効果が大いに期待されている。

主な課題
得られた結果
  • 英語の講義を復習できる環境が必要だった
  • 講義撮影やAVライブラリ化には編集作業に時間がかかるうえ、作業負荷も大きかった
  • 映像配信のためのデータ変換作業などが不要になった
  • 講義終了後、すぐに講義映像を配信できるようになった
  • クライアント側はブラウザだけでよく、管理コストの軽減につながった

ボーダレス経済の中で、英語はビジネスの公用語として、身につけておくべきスキルの1つであることは言うまでもない。特に情報分野や金融分野などでは、専門知識に加え、その知識を英語で駆使できる人材が求められている。

こうした背景をもとに、近年では情報分野の専攻で英語教育を充実させ、さらに講義自体も外国人教員が英語で行うという大学が徐々に増えてきた。英語教育で定評のある津田塾大学は、そうした大学の先駆け的な存在である。

津田塾大学は、日本最初の女子留学生の一人である津田梅子が米国留学から帰国後、1900年(明治33年)に先駆的な私立女子高等教育機関の1つとして開学した「女子英学塾」をルーツとする。学制改革にともない1948年(昭和23年)に「津田塾大学」となり、現在に至っている。スタートが「女子英学塾」だったように、一貫しているのは英語教育を重視するカリキュラムであるが、文学・国際関係学に加え、近年ではITの発展に伴い、情報科学・数学などの理系分野にも力点を置く。

その津田塾大学にあって、教育メディアに関わるコンテンツの作成を担当するのが視聴覚(AV)センターである。津田塾大学 学芸学部 英文学科 准教授でAVセンター長も務める吉田真理子氏は、津田塾大学の英語教育について、「伝統的に英語を母国語とする教員を多く配置するだけではなく、1960年代にLL教室を始めるなど、時代のニーズにあわせて積極的に新しい仕組みを取り入れ、学生の英語レベルを引き上げるカリキュラムを組んできました」とし、1つの試みとして本システムは、2007年度にテスト導入し、2008年度から本稼動が始まったと語る。

海外の大学に留学しているのと異なり、日本の大学に在籍していて英語レベルを引き上げるには、学生本人の意志も必要だが、カリキュラムやシステムのサポートも重要になる。「講義の復習を行い、繰り返し講義を聴くことも、理解を深めるには重要な要素だと考えています」と吉田氏。かねてより津田塾大学は、英語の講義をビデオ撮影、DVD化し教材コンテンツとして整備し、学生の復習などに活用できるようにする取り組みを行ってきていた。しかし、コンテンツ化するための作業負荷は、非常に大きかった。

AVセンターの石井 明氏は「1時間半の講義を編集してデータ化するには、単純に講義時間の倍以上の時間が必要で、細かい手間なども含むと映像配信までにざっと半日程度はかかっていました。あまり時間がかかるようでは、知識が新鮮なうちに復習したい学生にとっては使いにくい。かといって、迅速にやろうとすれば、編集設備や要員の増強が必要でした」と、記録媒体を使ったかつての手法に限界を感じていたという。

こうした状況で次に津田塾大学が白羽の矢を立てたのが、サンとブイキューブ、キヤノンITソリューションズの3社提携による教育機関向けe-Learningソリューションだった。採用のポイントとなったのは、導入と運用のしやすさである。

「特別な制約がないという点が一番の魅力でした。サーバ側はポート80番があれば構築できて、特殊なネットワークの構成は一切いりません。講師や学生が授業で使用するパソコン側も、事前の設定や専用ソフトは不要で、任意のブラウザとFlash Playerのプラグインさえあれば、動画や音声そしてプレゼンテーション資料などを投影できます。また、講義を撮影した後は編集作業などをほとんど必要とせずに、サーバにデータを置くだけで映像配信できることもポイントでした」と石井氏は語る。

この教育機関向けe-Learningソリューションは、サンのサーバと、ブイキューブのビジュアル・コミュニケーション・ツール「nice to meet you」、キヤノンのネットワーク対応入出力機器(Webカメラ、プリンタなど)などで構成される。専用端末や教材作成のための専用ソフトウェアは不要であり、OSやブラウザの環境に依存しない非常にシンプルなシステム設計になっている。そのため、ITの専門的な知識を持たない教職員でも、簡単にe-Learningシステムを運用でき、保守が容易なのが特徴である。

青柳 龍也 氏
津田塾大学
学芸学部
情報科学科
教授
青柳 龍也 氏
吉田 真理子 氏
津田塾大学
学芸学部
英文学科
准教授
視聴覚(AV)センター長
吉田 真理子 氏
トニー・マレン 氏
津田塾大学
学芸学部
情報科学科
講師
トニー・マレン 氏
石井 明氏 氏
津田塾大学
視聴覚(AV)センター
職員
石井 明氏 氏

同ソリューションのコアとなるnice to meet youは、主に映像配信の機能を担っており、録画された講義は編集工程を必要とせずに、画像データをサーバにアップするだけでオンデマンドの映像配信を実現する。また、講義中に講師が使用するプレゼンテーション画面を、学生の座席に設置されたパソコンに映し出す機能も持つ。

今回導入したハードウェアは、アプリケーション・サーバとしてSun FireTM X2100 M2が2台とコンテンツ・サーバとしてSun Fire X4100 M2が1台。これまでもサンのハードウェアを活用する経験のある津田塾大学は、「サンのシステムはファイルサーバや認証基盤などで永年使用している実績があり、とても安定的に稼動しています。非常に信頼性が高いシステムだと評価しています。e-Learningシステムの運用においても、トラブルは起きていません」(石井氏)という。

情報科学英語の授業風景。学生達が研究成果を英語で発表していた。写真中のカメラで授業風景を撮影し、授業終了後にその映像を配信する
情報科学英語の授業風景。学生達が研究成果を英語で発表していた。写真中のカメラで授業風景を撮影し、授業終了後にその映像を配信する

e-Learningシステムを活用しているのは、情報ビジュアライゼーションを研究する「情報科学英語」という専門科目である。その背景を、今回のe-Learningシステムの導入を主導した津田塾大学 学芸学部 情報科学科 教授の青柳龍也氏は、次のように語る。

「津田塾大学では、2006年度から全学科を対象にメディアスタディーズ・コースを設置しました。マルチメディアやインターネットなど、メディアが重要なポジションを占める時代に、文系や理系を問わず、ここでは高い英語力が求められます。英語で専門知識をより深く理解してもらえるようにする工夫が必要となります。このような経緯からe-Learningシステムのような仕組みが必要だと考えるようになりました」

情報科学英語の講義は英語のみで行われるため、受講生にはTOEICテストが600点以上というハイレベルな英語力を前提としている。とはいえ、日常的に使っている日本語とは勝手が違うため、講義内容を聞き逃したり、専門用語が聞き取れなかったりすることもある。そのため、「学生は講義を聴き直したり、講義で使われたプレゼンテーション資料を見直したり、講義で出された課題を確認したり、といったことにe-Learningシステムを使っています」と、情報科学英語を担当するトニー・マレン(Tony Mullen)氏は利用状況を説明する。

運用を開始したばかりのe-Learningシステムだが学生への浸透度はすでに高く、受講者のうち半数以上が活用しているという。

学生はカメラ撮影が入ることを特に意識しておらず、講義への影響もないという。ただ、「データとして残ってしまうので、私は間違ったことを言わないように注意しています(笑)。それはともかく、e-Learningシステムに最適な講義のあり方は追求していきたいと考えています」とマレン氏は意欲的に話す。

e-Learningソリューションを支えるサンのサーバ群
e-Learningソリューションを支えるサンのサーバ群

nice to meet youを核とした津田塾大学のe-Learningシステムは、現在のところ、学内のネットワーク上に設置されたパソコンのみを画像配信の対象としており、学外からのアクセスは制限している。将来的には学外に解放することも検討していくが、石井氏は現時点では慎重な姿勢を示している。

「1つの理由として、講義では多くの文献や映像や図表などの資料を使うケースがありますが、それをインターネットに載せた場合の著作権をどのように扱うべきか、学内にとどまらない大きな懸案です。また、システム的にも、学生のアイデンティティ管理と講義画像へのアクセス権限を連携管理するなど、様々なセキュリティ対応策が学外からの利用に向けた今後の課題ですね」

一方で、他の講義への拡張には取り組んでいく考えだ。青柳氏は「社会人として活躍する卒業生から、学生時代にもっと英語をやっておけばよかった、と聞くことがあります。津田塾大学出身だと、英語力を期待されることが多いですから。そう思わずに済むようにするためにも、e-Learningシステムをもっと広く活用させていきたいですね」と語る。

また、石井氏は「nice to meet youにはライブ配信機能もありますから、その機能を利用した講義も検討していきたいですね」と期待を寄せている。

青柳氏も「英語強化目的のみならず、Face to Faceの講義を補完する学習ツールとして他の教員にとってもメリットのあるシステムだと思っています。情報科学英語での成果を通じて、そのメリットを見せていきたいですね」と語り、自身も時間のあるときには情報科学英語の講義へ足を運び、今後の展開に向けた考えをめぐらせているという。

英語授業の復習用として始まった津田塾大学のe-Learningシステム。専門科目を英語で理解するという当初のゴールは達成しつつあるようだ。今後は新たな講義形態を生むきっかけのツールとしても、活用されていくことになりそうだ。

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