2006年4月

EDU INSIGHT

教育分野におけるePortfolioの普及

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教育分野におけるePortfolioの普及
教育分野におけるePortfolioの普及

かつて少数の大規模な大学で実験的プロジェクトとして扱われていたePortfolioは、もはや「将来有望なもの」というレベルを脱しました。オープンソース・コミュニティのプロジェクト、公開された標準、ePortfolioに特化した展示会など、どれをとってもこの数年でePortfolioの概念や技術がすでに導入の初期段階を脱したことを物語っています。いまや、ePortfolisoが広く普及する時期が到来したと言えるでしょう。

ePortfolioは、個人が一定期間に学習した内容、その省察、表示方法を、デジタル情報にして一元管理しようとするものです。現在のePortfolioでもポートフォリオの中核となるテーマの多くは古代ギリシャの時代から存在しているものですが、最新技術のおかげで、その潜在的な応用範囲は過去何世紀にもわたって学習者が利用してきた方法の利用範囲よりはるかに大きなものとなっています。

こうしたePortfolioの普及を後押ししているのは、技術、学習、そして学ぶ側と教える側双方のニーズの、根本的な変化です。現在、個人の作業は電子的に行われることが多くなり、生涯学習や必要な時に必要に応じて行う非公式の学習への注目が世界的に高まっています。政府、教育者、学生、保護者はいずれも、一定期間の学習効果をやり直しのきかないテストのみによらずに確認できる、より効果的な方法を模索しています。

ePortfolioには、名称に多少の違いはあるものの、基本的には、3種類あります。第一のタイプは、そのオーナーがたとえば大学の学部課程を修了するまでの期間など、一定期間中に学習したことをすべて文書化するものです。第二のタイプでは、その学習がオーナーの発達にどのような影響を及ぼしたかという点についてオーナー自身の省察がコンテンツに追加されます。第三のタイプは、就職や発達目標など、特定の課題に対するオーナーの達成度を示します。コンテンツの選択とアクセス権は、応じてオーナーが管理します。3種類のePortfolioを組み合わせて利用することも可能であり、それにより、さまざまな学習成果、個人的成果、あるいは業務関連の成果を得ることができます。

ePortfolioチャート図
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ePortfolioは、個人や教育機関の間でその応用範囲の広さが認識されるようになるにつれ、すでに様々なかたちで利用が広がっています。いまや多くの教育機関にとって課題となっているのはePortfolio利用の機運を高めることではなく、各機関の既存の活動や慣行にePortfolioをどのように統合するかという点にあります。以下は、現在ePortfolioの世界的な普及が進みつつある要因の一例です。

認定関連業務

多くの教育機関が、継続的な向上というテーマの推進や、教職員及び学生に継続的な生涯学習や省察を促すことに目を向けています。そのため、「学習の目的や目標に向けた学生の進歩に教育機関がどう取り組んでいるかを示すシステムのレポートはないのか」という認定する側の疑問に答えるツールとして、ePortfolioが利用されています。サンのパートナー企業であるNuventiveのマーケティング及び事業開発担当バイス・プレジデント、Malcolm Hobbs氏は次のように語っています。

「教育機関の視点から見ると、ePortfolioは教育機関としての品質保証や説明責任、また、とりわけ米国においては認定を受けるための業務に役立ちます。認定機関は、認定を受けようとする教育機関が最後の土壇場で大量の書類を作成して提出しても、なかなか認可してくれません。全体的な戦略とプロセスが適切に設定されていること、そしてパフォーマンスの継続的向上を示す明確な裏付けと証拠の存在がますます求められるようになってきています。」

デジタル化/ペーパーレス化

研究論文、発表資料、実験、グループによる共同研究など、今日の学生の作業は多くの場合、紙で処理されるのではなくデジタル化されているため、ePortfolioのような電子的プレゼンテーション及び管理ツールの利用には最適です。さらに重要なのは、これらコンテンツが、プロプライエタリな標準ではなくオープンな標準に基づいて作成されるケースが増えてきているという点です。そのため、ePortfolioの相互運用性や利用可能な期間が向上し、コラボレーションの機会も増えます。

職能団体

各種認定機関から高齢者団体まで、数千の職能団体が会員を対象とした継続的な学習及び認定サービスを提供しています。ePortfolioは会員の専門技能や成果を記録するための付加価値ツールとして評価が高まっています。

生涯学習

生涯学習への取り組みが盛んになるにつれ、公式の教育制度とは別の学習に注目が集まっています。ここでもやはりePortfolioは、個人が授業以外の環境で行った学習や経験を記録するツールとして利用され、非公式学習と公式学習のギャップを埋める役割を果たしています。

参加の時代

自分自身の情報について、アクセスと表示を管理しながらその情報を特定の他者と共有するという考え方は、ePortfolioの重要性を高める主要な要因であり、また、ePortfolioが学習中の個人と教育機関とのつながりを強化する理想的なツールと言える理由の1つでもあります。

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ePortfolioの現状を見ると、サンが教育市場について長年提唱してきたことがそのまま反映されています。つまり、技術の普及を推進するのはオープンな標準と、その技術の導入を加速するベスト・プラクティスの共有を促すツール、リソース、コミュニティの存在である、ということです。

認定の問題はePortfolioの必要性を高めている要因ではありますが、成長著しいこの分野に現れつつある主要な動きの1つに過ぎません。以下の通り、他にもまだ様々な動向が見られます。


データに対する個人の所有権

公式の教育環境では、誰にポートフォリオへのアクセス権を認めるのか、またポートフォリオの表示方法がおそらくは数十にものぼる中で閲覧者にどの表示方法を適用するのかという点について、学生と教職員が完全にコントロールできなければなりません。学生は自分の個人データの一部にセキュアにアクセスする権限を教育機関に付与し、その機関全体で総合的な表示が可能となるようにします。

個人用ツール vs グループ用ツール

ePortfolioの一般的な概念は、個人用ツールとしての利用に焦点を当てたものですが、個人が受ける講義の提出用や評価用に利用されることも多くなってきました。すでに多くの教師がePortfolioを「課題」として利用し、それをもとに学生の成績を採点しています。また、プログラムや学部の教育的効果を評価するツールとしても利用されています。

学生の「全体像」の把握

大学は個人の「学生」としての一面だけではなく、個人の「全体像」を示す場であるというきわめて強固な概念があります。教育機関がその教育的使命をどれほど効果的に達成しているかという評価の核となるのは、学習者個人の学業成績ではありますが、学習の進展や個人の発達は、授業以外の場でもたらされることが非常に多いものです。そのため、大学生のePortfolioには、従来の学業成績に加えて運動競技の成績や社会奉仕活動などを含めることが考えられます。従来の成績証明書や履歴書では、学生の発達の中でも学業以外の面はさほど重視されていませんでした。

情報収集を超えたリポジトリとしての活用

ePortfolioは、デジタル・ファイルが保存された電子的なファイル・キャビネットというだけではなく、データの整理や様々な視点からのまとめを可能にするツールです。「そこには重要な違いがある」とNuventiveのHobbs氏は言います。「個人で無数のポートフォリオを持つことができ、その一つひとつで、例えば学業成績、社会奉仕活動、運動競技、あるいはそれらを組み合わせたものなど、自分の生活の様々な視点でまとめることが可能なのです。これは全て、個人が自分の生涯を管理するという概念に基づくものです。」

また、Nuventive製品のユーザでもあるカリフォルニア州のウッドベリー大学でCIOを務めるSteve Dyer氏からは次のような意見が聞かれました。ウッドベリー大学では、サンプル・テンプレートを提供して学生や教職員による情報の整理と表示をサポートしています。「ソフトウェアを提供するだけでは、価値のないデータの寄せ集めになってしまいます。重視すべき点を説明してしっかり管理し、巨大な電子ファイル・キャビネットになるのを防がなければなりません」とDyer氏は説明します。

他のアプリケーションやサービスとの統合

ePortfolioをオープンな標準を介して学生情報システムや学習管理システム(LMS)などのアプリケーションと統合することにより、それらに付加価値をもたらすことができます。これらのシステムは教育機関の視点に偏りがちであり、学習者の視点を備えたツールを提供できるものがありません。ePortfolioはLMSと様々な点で統合して個人データをやりとりすることが可能ですが、ePortfolioの真の価値は、学生が以前の学習について省察したり、教授やクラスメートからフィードバックを得たりすることができる点にあるともいえます。単に科目に合格したというだけではなく、何を学習したのか、それを裏付けるものがあるかが分かるということです。

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サンは、Open Source Portfolio Initiative(OSPI)やIMS Global Learning Consortiumなど、ePortfolioのためのオープンソースやオープンな標準を開発するいくつかの団体に参加しています。

OSPIは教育機関と個人で構成される新しい団体であり、プロプライエタリでないオープンソースによる電子ポートフォリオ・ソフトウェア・ソリューションの共同開発を行っています。2003年に提供された最初のリリースはミネソタ大学の研究を基にしたものでした。しかし2005年のリリース2.0は、多くの専門分野を網羅する国際的なチームが設計し、多様な潜在的用途に対応できる多機能で柔軟なオープン環境を提供するためのベスト・プラクティスを多数包含する設計となっています。ePortfolioはポータビリティがきわめて重要であると考えられています。そのため、インフラストラクチャはOpen Knowledge Initiative(OKI)のOsiD及びIMS標準に基づくSakaiベースのプロセスを採用して開発され、他のアプリケーションやサービスとのシームレスな統合が可能です。

IMS Global Learning Consortiumが提供するePortfolio標準の大部分は、複数の既存IMS仕様を1つにまとめたものです。相互運用性を確保するだけではなく、個人や組織がプライベート、仕事、学問など様々な用途にePortfolioを利用できるようになっています。また、この標準は個人がePortfolioに収集したいと考える2種類の情報、つまり個人が作成した情報、及び個人の成績について他者が作成した公式記録を中心に策定されています。

ePortfolioは、学習にかかわる全ての人々に大きなメリットをもたらします。学習者にとっては個人の知識を管理するためのプラットフォームとなります。ePortfolioを利用して、自分の発達、成長、省察の過程を示すことができるだけでなく、計画立案や目標設定のためのツールとしても利用することができます。学生が自分で成功するための方法を見極めて確認できる能力を引き出し、公式学習と実務経験及び正課と関連した課外活動経験を有意義につないで、より豊かな学習経験を実現します。

教職員にとっては、学生の進歩を支援するパートナーとしてePortfolioを活用できるだけでなく、自分たちの指導の効果や教職員自身の専門知識の向上を評価するツールとしても利用することができます。また、教職員同士が研究成果などのコンテンツを管理された方法で共有することも可能です。教育機関にとっては、前述のような認定関連のメリットとともに、教育機関としての有効性を継続的に評価できる利点もあります。さらに、ePortfolioには、卒業生の進歩を支援し続けるという、より永続的な役割も期待できることが実証されています。

ePortfolioは、個人が自己をアピールするための情報や資料を適切に管理及び構成して提示できるツールとリソースを提供します。全ての個人にとって強力なツールとなり、生涯の公式学習及び非公式学習の成果をまとめ、省察する場としての役割を果たします。

また、個人が各自の職業上のニーズに対応する機会も提供します。ePortfolioを構築することで、教師と学生の間の適切な指導関係、仲間同士で助け合う能動的学習、職能の向上についての継続的な省察が促進されます。ePortfolioの作成、改善、管理を行う過程が、継続的な内省や新しい技能の習得、及び技術の上達をもたらします。

ePortfolioは現在すでに実用化され、きわめて有益なツールとなっていますが、そのポータビリティ、相互運用性、コラボレーション機能を強化するオープンな標準の開発には、引き続き力を入れていかなければなりません。そうすることで、学生情報システムや学習管理システムなど全学規模のアプリケーションとのシームレスな相互運用が可能になります。ePortfolioが十分に成熟したツールとなり、教育機関のあらゆる分野で適切な能力を備えた教育者がこれを採用するようになれば、やり直しのきかない試験に替わる有効な評価システムとして利用できることは間違いありません。そして教育の現場は試験を行うことに力を入れるのではなく、指導と学習という本来の役割に注力することが可能になります。

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