2006年5月
EDU INSIGHT
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EDU INSIGHT
未来を拓く新しいコミュニティの必要性

世の中の動きが少しでも見えている人なら、今、ソフトウェア業界に2つの傾向があることに気が付いているでしょう。オープンソース・ソフトウェアと、サービスとしてのソフトウェアです。しかし、この2つに繋がりはあるのでしょうか。もしあるなら、それは今後どのように発展していくのでしょうか。

オープンソース・コミュニティを利用すれば、ソフトウェア開発者は、誰もが利用できる開発環境を共有して、オペレーティング・システムやWebサーバ、ブラウザ、デスクトップ、生産性向上スイートなど、ネットワーク・サービスのためのビルディング・ブロックを構築することができます。

しかし、サービス・プロバイダがオープンソースのビルディング・ブロックを利用するようになっても、サービスとしてのソフトウェアは、実はそれとはまったく別の問題です。なぜならサービスとしてのソフトウェアは、ビットではなく、ビットから生み出されたものを提供することだからです。

このことが奇妙な形で表われている事実があります。それは、今日のソフトウェア企業最大手の多くが、ソフトウェア企業としては全く知られていないということです。Google、eBay、Amazon、PayPal、Yahoo、これらはすべてソフトウェア企業です。しかし私たちは、これらの企業からビットを購入しているわけではありません。これらの企業が創り出すコードから生まれたサービスを利用しているのです。

Googleのような企業のサービス運営にオープンソース技術が利用されていることはよく知られています。したがって、2つの傾向が混じり合っている、あるいは融合している部分は明らかにあるのです。では、その次に来るのは何でしょうか。オープンソースと、サービスとしてのソフトウェアの後には、何が来るのでしょうか。答えはオープン・サービスでしょう。しかし、これを保証することはできません。

Googleは非常に皮肉な存在です。Googleは多くの意味において新しいサービス経済の象徴といえる企業ですが、世界で最もプロプライエタリなソフトウェア企業の1つでもあります。Googleのコードを見たことのある人は、どのくらいいるでしょうか。Googleの検索エンジンはオープンソースでしょうか。違います。では、Googleの広告やオークションに利用されているソフトウェアはオープンソースでしょうか。やはり違います。私はオープンソースにすべきだと言っているのではありません。

しかし、もし私たちが物事を注意深く見ていくことを怠り、自然のなりゆきに任せたままでいたら、サービスというものは、それがオープンな技術を利用して生み出されたものであっても、非常にプロプライエタリになっていくのだということを言いたいのです。

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では、運用方法と構造に透明性のあるサービスを共同で生み出し、人々がそのサービスにアクセスできるようにするには、どのようにすればよいでしょうか。ソフトウェア文化における次の潮流は、それを可能にするものでなければなりません。でなければ、皆が苦労して共通のインフラストラクチャを構築し、皆がそのために貢献しても、特定のプロプライエタリな企業がこのインフラストラクチャを管理して利益を得るようになり、他者はこれと競争すらできないという状況で終わるだけになります。

なぜでしょうか。サービスに利用するインタフェースがそれらの企業に支配されてしまうからです。

インタフェースの重要性を理解するために、ここで少し、3穴式電源プラグの特許があれば何を得られるか、考えてみてください。そのような特許を持っていれば、電気製品市場の多くを独占することができるでしょう。ですから私は、インタフェースの特許保護は、取得がきわめて困難であるようにすべきだと考えています。

電気製品市場における競争は、エネルギー効率、信頼性、コストといった要因に基づくべきで、プラグのデザインに基づくべきではありません。ソフトウェアについても、同じ原則が当てはまります。

健全な競争と、新たな独占。私たちが生み出したいのはどちらでしょうか。

私は決して、新型電機子やより強力な磁石、改良型の制御論理を開発した電動機メーカーが、その特許保護を取得すべきではないと言っているのではありません。私が言いたいのは、競争相手がその3穴式電源プラグをリバース・エンジニアリングすることが可能であるようにすべきだということです。

同様に、もし、あなたが生み出したサービスのインタフェースに世界中の人々が依存するようになっても、あなたはそのインタフェースの権利を持っているからといって、他者が同じようなサービスを生み出そうとするのを排除するべきではありません。従来のソフトウェア・ベンダー各社の間で、あるベンダーから別のベンダーに乗り換えようとすると必ずコストがかかるように、サービスを乗り換えるときにもコストはかかります。そこで鍵となるのがインタフェースです。インタフェースがオープンなものであれば、いろいろなベンダーのサービスを見比べて、一番安いものを購入できるようになるでしょう。そのようにならなければ、進歩はありません。

少なくとも私たちは、インタフェースは常にリバース・エンジニアリングが可能でなければならないことを認識し、そうすることを義務付ける必要があります。

これが、社会的交換です。新しいサービスが生み出され、人々がそのサービスに依存するようになったら、他の人たちがそのインタフェースを調べて、そこからまた別のサービスが生み出されていくようにするのです。そのサービスを改良するか、迅速化するか、簡易化するか、安価にするか、それはその人たち次第です。大きな革新とはこのようにして生み出されていくものです。

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新しい種類のコミュニティも必要です。現在あるコミュニティのほとんどは、コードを中心に構成されたものです。しかし、オープン・サービスを生み出していくためには、計算処理能力を中心としたコミュニティをもっと増やすことが必要です。

例えば、Googleの検索サービスをオープンソースで提供したいと思うなら、実際に運用されている検索エンジンを利用して人々に共同作業をしてもらう必要があります。しかし、Webクロールに必要とされる計算処理能力を構築しようという人はどのくらいいるでしょうか。ここで、想像してみてください。コミュニティWebクローラというWebの共有データベースがあり、そこで実験的な検索技術のテストを行えるようになれば、どうなるでしょうか。

私は容易に想像できます。人々は、各自のPCの計算サイクルを共有できるピア・ツー・ピアのネットワークを通じて、あらゆる種類のWebベースの実験を行うようになるでしょう。例えば、SETI@homeで地球外生命体からの電波探索以外の実験も行われるようになるということです。あるいは、CPUサイクルを手頃な値段で販売するグローバル・グリッドを通じて行うようになるかもしれません。

または、この2つを組み合わせた方法も可能でしょう。ピア・ツー・ピアのネットワーク上でマルチプレイヤ・ゲームを共同開発し、その商用バージョンをグローバル・グリッドで発信するのです。インフラストラクチャは、自分で構築する代わりにどこかから借りてくればよいのです。

このような可能性を、サンは今後、Sun Gridによって追求していきます。そして、いずれ人々が、「ここに私の作ったプログラムがあります。どうぞダウンロードしてください」と言う代わりに、「ここで私の作ったプログラムが動作しています。アクセスして使ってみてください。ほかにもサービスを付け加えられるようなら、付け加えてください。共にその価値を高めて、利益を得ていきましょう」と言えるような場所を提供していきたいと思っています。

グレッグ・パパドポラス(米国サン・マイクロシステムズ社、エグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高技術責任者)
グレッグ・パパドポラスは、米国サンのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高技術責任者として、技術の単純化と革新を目指し、年間およそ20億ドルに及ぶサンの研究・開発プロジェクトの全てを指揮しています。テクノロジ業界において20年以上の経験を持ち、サンの技術方針、基本設計、及び標準化の管理を担当しています。

(この記事はNetworkWorld.comに掲載されたものです)

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