2006年5月
EDU INSIGHT
未来を拓く新しいコミュニティの必要性
EDU IN ACTION
ウェスタン・ミシガン大学:システム統合による学内IT基盤の改善
INSIDE TECHNOLOGY
Sun Labsプロジェクト:Sun SPOT無線センサー
KIM'S NOTEBOOK
OpenSPARC
プレスリリース一覧
教育研究機関のページへ
バックナンバー一覧
INSIDE TECHNOLOGY
Sun Labsプロジェクト:Sun SPOT無線センサー

Sun Labsが発表したSmall Programmable Object Technology(SPOT)システムは、無線トランスデュ ーサ・アプリケーションの開発を簡素化することにより、無線センサーの潜在的な可能性を現実世界の製品として実用化する取り組みを支援します。

無線センサーの持つ可能性については、数年前から、科学者・研究者、産業界、軍事・政府関係者、消費者など様々な人々の間で大きな期待が寄せられてきました。無線センサー及びトランスデューサ(センサーにアクチュエータ・メカニズムを搭載したもの)を使用したアプリケーションの可能性について、想像力の許す限り様々なものが考案されてきました。

多くのアプリケーションではセンサー機能だけでは十分ではなく、センサーで感知したデータに基づき作動するアクチュエータ機能が求められます。センサー機能とアクチュエータ機能の両方を備えた、バッテリー式の小型プラットフォームが必要です。

無線センサー及びトランスデューサを使用して、例えば次のようなことが実現するのではないかと考えられています。

  • 「スマートダスト」と呼ばれる小型無線マイクロマシン(MEMS)センサーのネットワークを構築すれば、室内の気温の低い場所や、軍事活動中の敵軍の動きなど、あらゆることを追跡して報告できます。
  • 無線センサーによって、例えば産業機器内部で許容範囲を超えた振動を感知して製造上の欠陥を検出する、病室内の患者の動きを監視する、農場から湖水への肥料の流出を追跡する、銃撃の発射地点を特定するなどが可能になります。無線センサーを無線IC(RFID)タグ及びアクチュエータ・メカニズムと組み合わせて使用すれば、建物内の照明、暖房、設備をインテリジェント制御でき、室内に人が入る直前に快適な状態に整えることができます。
  • 無線センサーを搭載した「ジェスチャー・インタフェース」では、手のジェスチャーでデバイスを制御できるようになり、ダイヤルやノブを探して回す必要がなくなります。
  • 自律機能を備えた多数の車両一式を利用して、所定の任務を遂行させたり、上位からの管理指令に一団として対応させたりできます。

ページ先頭へ

無線センサーは魅力的な技術ですが、全体として見ると現時点ではまだ、ビジョンと現実世界でのアプリケーションの実用化の間には大きな差があります。無線センサーは今のところ原始的な段階にあり、プログラミングが難しく、大量商用化の準備はできていません。次のような、克服しなければならない技術上の課題がいくつかあります。

  • 無線センサー及びトランスデューサのシステムを構築し、調査するための現行の開発ツールが、使いにくく生産性が低い。
  • 多くの無線センサー・アプリケーションにとってセキュリティは重要な課題であるが、効果的なセキュリティ・メカニズムを厳しいリソース制約の中で妥当なコストで実装することは難しく、複雑である。
  • 信号の解析及び制御のために、センサーに密接したより強力な処理機能が必要であり、また無線トランスデューサ・アプリケーションの全ての面(ハードウェアからネットワーク・レイヤーまで)を調査するためにライブラリが必要である。
  • 無線センサーの小型デバイスには、その特殊な性質のためにネットワーク接続上の課題があり、デバイス同士及びインターネットとの通信を可能にするには新しい方法が必要である。現行の標準が適用されないため、新型デバイス同士の通信及び新型デバイスと現行標準を採用したデバイスの間の通信の両方をサポートする新しい標準が必要である。

ページ先頭へ

Sun Microsystems Laboratories(Sun Labs)の研究者は、無線センサー/トランスデューサ・アプリケーションの開発を阻害している主要な問題の解決に向けた大きな前進となるシステムの開発に取り組んでいます。

32ビットのARM CPUと2.4GHzの11チャネル無線機能を採用したSun SPOTは、無線センサー/トランスデューサ・アプリケーションの開発プロセスを劇的に簡素化します。このプラットフォームでは、I/O用のセンサー・ボード、無線通信用の802.15.4の電波を使用したJavaベースの無線トランスデューサ・アプリケーションを構築でき、NetBeansなどの使い慣れた統合開発環境(IDE)を使用してコードを記述できます。

Sun SPOTシステムでは、上位レベルのプログラミングにJavaテクノロジを使用しています。開発者は標準的なJava IDEを使用して、Javaでプログラムを記述し、それを無線センサー・デバイスで読み込み、実行、デバッグできるとともに、下位レベルのメカニズムにもアクセスできます。Javaテクノロジが本来備えているポータビリティにより、プラットフォーム間でのアプリケーションの移行が簡素化され、市販のハードウェア・コンポーネントを使用した新しい無線センサー・デバイスの構築が可能になります。

Javaテクノロジではまた、Cなどの従来の開発言語での下位レベルのタスクの多くが解消または合理化されており、数百万人に及ぶJavaテクノロジでコードを記述した経験のある開発者であれば、無線センサー/トランスデューサ・プログラムを構築するにあたって新しい知識を習得する必要はほとんどありません。

Sun SPOTシステムは、ほぼ全ての部分がJavaテクノロジで記述された「Squawk VM」と呼ばれる小規模なJ2ME仮想マシン(VM)を搭載しています。これにより、無線トランスデューサ・アプリケーションをハードウェア上で直接(OSなしでCPU上で直接)実行できるため、オーバーヘッドの低減及びパフォーマンスの向上が実現します。エンド・ユーザにとっても、ネットワーキング・プロトコルといった、通常はOSの内部に埋め込まれている下位レベルのサービスを、様々な形で実験的に実装できる柔軟性というメリットがあります。

開発中のJavaライブラリ一式が完成すれば、センサー、センサーのアプリケーション・ボードのI/Oピン、及び統合されたオンボード無線機能へのアクセスが可能になります。Squawk VMでは、1つの仮想マシン上で複数のアプリケーションを実行することにより、またクラス・ファイルのよりコンパクトな表示を使用することにより、SPOTデバイスが利用できる小さなメモリ・スペースをより有効に活用できます。

ページ先頭へ

従来のコンピュータ・アプリケーションでは、プログラミング用、ネットワーク上のアプリケーションの設定用、監視用など、開発タスクごとに別々のツールが必要でした。Sun Labsの研究者は、これらのタスクの全てを単独で網羅できるツールを開発しました。これにより、無線トランスデューサ・プログラムの構築がいっそう簡素化され、Sun SPOTアプリケーションの活用範囲の可能性がさらに広がります。

分散システムの構築、特に小型無線デバイスを含むシステムの構築は、非常に難しいと言われています。SPOTWorldを使用すれば、そのようなシステムの構築プロセスがより容易になります。

SPOTWorldは、スタンドアロンでも、またサンがスポンサーとなっているオープンなIDEであるNetBeans(ダウンロード可能)と統合しても実行できます。SPOTWorldインタフェースのポップアップ・メニューを使用して、アプリケーションの作成、アプリケーションのソース・ファイルの表示、デバイスの動作確認のためのping送信、SPOTWorldとデバイスとの接続の切断及び再接続など、様々なタスクを実行できます。SPOTWorldでは、次のことが可能です。

  • 複数のプログラムを単独で、あるいは並行して単一のSun SPOT上で起動(同時に起動できるプログラムの数を制限するのはデバイスのメモリのみ)。
  • コードを編集、及び編集後のコードをSun SPOT上で再展開。
  • 無線トランスデューサ・アプリケーションをデバイス上で実行中にデバッグ(プログラムの出力を端末ウィンドウで取得することも可能)。
  • 電波到達範囲内で稼動しているSun SPOTを検出。
  • 検出したSun SPOTからステータス・レポートを取得(Sun SPOTで実行中のアプリケーションの実行を一時停止したり再開したりすることも可能)。
  • 無線ネットワーク上でプログラムを展開。

Sun Labsの研究者は、SPOTWorldを活用してさらに便利にSun SPOTを開発、展開するための新機能や拡張機能の開発に取り組んでいます。

SPOTWorldのスクリーンショット

NetBeans IDEと統合されたSPOTWorldのスクリーンショット。SPOT及びデスクトップで実行中のJavaテクノロジ・アプリケーションのコードを検査、展開、管理、及び編集できます。

SPOTWorldのきわめて画期的な機能の1つに、「移行可能なアプリケーション」機能があります。これは、アプリケーションを、その完全なステート情報も含めて、あるSun SPOTから別のSun SPOTへ、実行中にドラッグすることができるというものです。この機能により、例えばソフトウェアをあるSun SPOTから、新しいバッテリーを備えた別のSun SPOTへ、ステート情報を失わずに移動することが可能になります。また、ネットワーク内で移行できるプログラム、つまりあるデバイスからステート情報及びその他のデータを収集する別のデバイスへ移動できるアプリケーションを記述することもできます。

予定されているSPOTWorldの機能拡張としては、次のようなものがあります。

  • バッテリー残量、信号強度、メモリ空き容量などの全般的な診断情報を提供する機能。
  • メッシュ・ネットワークを介して通信を監視する機能。1つのSun SPOTから電波パケットを宛先に転送可能。
  • トレンド情報をリアルタイムで表示する機能。たとえば、SPOTWorldで室温情報の監視およびグラフ表示が可能。
  • Sun SPOT、および従来のデスクトップやサーバで構成されたネットワークに対応する「混合ネットワーク」用のアプリケーションを開発する機能。
  • 無線(OTA: Over The Air)リプログラミング機能。複雑な地形の場所や敵対的な環境などでもセンサー・アプリケーションを展開可能。

ページ先頭へ

セキュリティは、無線トランスデューサ・アプリケーションにとって特に重要であり、また特に難しい課題です。無線トランスデューサは、メモリ容量、計算処理能力、電源供給に制約があり、敵対的または危険な環境では無人で運用する必要があるため、オーバーヘッドを極限まで小さくしながら強力なセキュリティを確保することが求められます。

Sun Labsは、いくつかのセキュリティ技術について独自の専門知識を有しており、これを無線センサー及びトランスデューサに応用しようとしています。そのようなセキュリティ技術の1つに、公開鍵暗号技術があります。これは、多数のデバイス間のセキュアな通信のブートストラップ、いわゆるスケーラブルな鍵管理と呼ばれる問題にとって、なくてはならない技術です。送受信者とデジタル・コンテンツ(コードとデータ両方)を認証するためのデジタル署名にも使用されています。

公開鍵暗号技術は、センサー・デバイスに搭載可能な機能の範囲を超えている、と一般に考えられています。しかし、Sun Labsは先日、それまで報告されたものよりもはるかにパフォーマンスに優れた、高度に最適化されたRSAの実装を発表しました。また、RSAの効率的な代替リソースである円曲線暗号(ECC: Elliptic Curve Cryptography)の実装も開発しました。これは、8ビットCPUにさらなる大幅なパフォーマンス改善をもたらします。

これらの実装には、通称「Sizzle」と呼ばれる、フットプリントが小さいセキュアなWebサーバ・スタック(HTTP及びSSLを含む)を採用しています。Sizzleは、様々な小型デバイスの内部に組み込むことができ、Webブラウザを介してセキュアに監視、制御できます。カリフォルニア大学バークレー校のDavid Wagner教授は、Sun Labsのこの研究を「センサー・ネットワークのセキュリティに関する昨年の技術革新としては最大のものだ」と評しています。

ページ先頭へ

Sun Microsystems Laboratories(Sun Labs)は1990年に設立され、サン・マイクロシステムズの一部門として応用研究と先進的な開発を担当しています。研究所はカリフォルニア州及びマサチューセッツ州にあります。Sun Labsは、将来に対するサンの投資の一翼を担うものとして、サンを強力な技術企業に押し上げた技術の進歩や発明の多くにかかわってきました。例えば、非同期/高速回路、光インターコネクト、第三世代(3G)Web技術、センサー、ネットワーク・スケーリング、Javaテクノロジなどです。多くの企業がR&D部門を持っていますが、その中でもSun Labsは、技術実現率が業界内でもっとも高い研究所の1つであるといえます。

ページ先頭へ