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特別寄稿:迫り来つつあるRFIDによる流通革新 【1/2】
舟本 秀男氏 はじめに 2005年度「リテイル・システムズ/VICSスーパーコンファレンス」は、5月24日のワーキング・セッションで開始され、26日までの3日間シカゴ・マーコーミックプレースにて開催された。今回の大会テーマは「顧客価値の創造」であり、プロダクト・フォーカスからカストマー・フォーカスに進化する必要性を中心に論議された。 舟本流通研究室は、本大会に会わせ「米国流通視察団」を企画し、41名のメンバーにて本大会に参加した。5月24日には、視察団の多くのメンバーはリテイル・RFID・シンポジュームに参加した。 本年1月からウォルマートで本格稼動が開始されたこともあり、極めて関心の高いテーマである。本シンポジュームに参加して強く印象付けられた事は、流通サプライチェーンにおいて革命的とも思える壮大な事業が真剣にかつ熱気を帯び業界を挙げて推進されていることである。その目的はあくまでも技術面ではなく、ビジネス・デザイン/プロセスの革新であり新たな企業間コラボレーションの構築である。 ウォルマートの本格稼動に対し、懐疑的かつ後ろ向きの見解がコメンテーターやジャーナリズムから出されているが、様々な困難を克服しながら本革命的大事業は確実に前に進んでいると言えるだろう。 ダラスでは、サン・マイクロシステムズのRFIDテスト・センターを見学し、入出荷ゲート/ベルトコンベアーでのRFIDタグ読み取りテストの状況を見学した。小売業、製造業、及びITベンダーが緊密な協力の下、RFID本格稼動に対応する真剣な取り組みを目の当たりにすることができた。まさに壮大な革命的事業が展開されているとの感を持ったのは私一人のみではないだろう。 本レポートでは、小売業、製造業、そして情報システム・ベンダーがいかに連携しながらこの壮大なプロジェクトに取り組んでいるかを報告したい。 小売業の取り組み 今回の視察団のハイライトは本年1月より本格稼動を開始したウォルマートのRFID採用状況を視察できたことである。ウォルマート、グローバルRFIDディレクターのサイモン・ラングフォード氏をはじめ4名の方が5月26日夕刻我々視察団の宿泊しているホテルに来られ、現状について詳細説明をされた。 視察団参加の我々を驚かせ、ウォルマート・スタッフの説明にのめり込ませたのはその壮大な取り組みと共に、プレゼンテーション・スライド及び途中で使用されたビデオのナレーションが日本語化されていたことである。ウォルマートが先頭を切って推進しているRFIDの取り組みを是非理解してもらい、世界に拡張したいとの強い思いを感じた。 既報のように、ウォルマートは本年1月よりEPCglobalに準拠したRFID本格稼動を開始している。取引先57社から入荷されるパレットとケースにRFIDタグを取付け、テキサス州ダラス地区の配送センター3箇所、ウォルマート・ストア(スーパーセンターを含む)104店舗、サムズクラブ36店舗で実施された。 当初、読み取り精度等、技術面での混乱を指摘する声も聞かれたが、今回の訪問ではシステムも安定し規模も順調に拡大している様子が窺えた。RFID対応の取引先も訪問時点で100社を超え、2006年年初には新たに200社が加わり、配送センターも12箇所に拡大する計画である。開始以来5ヶ月を過ぎ、その間取扱ったパレットは55,565個で2,500万回の読み取りが実施されている。ウォルマートの規模を今更ながら認識させられる数値である。 ウォルマートにおけるRFIDシステムの概要を見てみよう。
サイモン・ラングフォード氏は、「RFIDは顧客、取引先、ウォルマート自身に大きなメリットをもたらすものと考えており、顧客はいつでも求める商品を高い鮮度で購入することができ、取引先は30分毎に取得できる詳細情報によりサプライチェーンの可視性を高め、在庫改善や適切な商品補充計画に用いる事で、結果として在庫切れを削減し売上の増加に貢献することになります。ウォルマートにとっても、自動化による作業の軽減と生産性の向上、さらに在庫切れの改善が期待できます」と語っていた。 翌27日、我々視察団メンバーはウォルマート・スーパーセンターのバックヤードを訪れ、RFIDシステム稼動の現状を直接拝見する機会に恵まれた。ここでもサイモン・ラングフォード氏をはじめ、わざわざアーカンソー州ベントンビルにあるウォルマート本社から来られた4名の方々が説明にあたってくれた。視察した店舗はスーパーセンターの中でも大型で約7,300坪、38部門で195,000SKUを取扱っている。 上記3番と4番のRFIDプロセスに関し具体的な説明を受けたが、印象として店舗スタッフがRFIDシステムを充分にこなしていると同時にそのもたらす効果に大きな期待を抱いているのを感じた。 大型トレーラー・トラックが直接乗り入れる6箇所の入荷ドックにはゲート型RFIDリーダーが取り付けられており、配送センターからのケース(一部パレット)、直納品業者からのパレット、ケース、さらに小分けされた商品が収まっているプラスティック・トレーが自動読み取りされる。商品受領に関し、現時点ではRFIDタグとバーコードの併用が行われており、何れもASN(事前出荷通知)と照合され検品レスのシステムとなっている。 プラスティック・トレーにはRFIDタグが取り付けられており(アセット・タグ)、使用済みのトレーは再利用のため所定の場所に戻されるようになっている。
バックヤードから売場へ品出しするドアにはリーダーが取り付けられているが、商品の出し入れ作業による破損を防ぐガードが付いており、また最適な読み取り精度をもたらす角度での設置となっており、積み重ねた実験の成果が現れている。またリーダーの価格も当初に比べ70%も安くなっているとの事で、今後の大量導入によるコスト削減効果が一層期待されている。 現時点、個品へのRFIDタグ採用は、プリンター、インク・トナー、SANYOの家電製品、タイヤ等高額/大型商品に限られているが、ウォルマート・メンバーからは、個品タグ拡張への並々ならぬ熱意が強く感じられた。 コンサルタント会社EPCソリューションLLCによると、ウォルマートのRFID導入に関わる費用の70−80%はソフトウェアのアップグレード、新規開発、インテグレーション、及びメンテナンスであり、2003年から2005年にかけて10億ドルを投入したと推測している。ウォルマートは何故このような費用を投入してRFIDシステムを推進しているのだろうか。 ウォルマートの販売管理費(配送センターコストを含め)は売上対比17%前後であり、我が国大手小売業よりも10%ほど低いレベルである。これがウォルマートを世界最大の小売業にし、更なる拡大を進める原動力になっている。この販売管理費をウォルマートは、RFIDシステム採用により一層の引下げを目指していると言えるだろう。 作業の自動化によるコスト削減、サプライチェーンの可視性を高めることによる最適な商品補充体制の構築、帳簿在庫と実在庫を限りなく一致させることによる作業効率と在庫管理の改善、さらに機会損失の減少による売上の増加を狙っているものと思われる。 ウォルマートに限らず、ターゲット、ベストバイ、アルバートソン、ドイツのメトロ、英国のテスコをはじめとした大手小売業でのRFID本格稼動が本年中には一斉に開始される。 我が国においても対岸の火事として傍観したり、批評家的立場を取っているだけではなく、具体的な一歩を踏み出す時期に来ていると認識する必要があるだろう。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||